麻生作品の中ではイマイチ。
★★☆☆☆
外事警察、読了。
今までの麻生作品に比べたらかなりイマイチでした。
本作はNHKドラマのノベライズ、じゃなくてドラマ前提で原案として執筆、したらしい。ですが麻生作品にしてはテンション低いな…。残念…。まぁドラマもなんかイマイチだったしな…。でもドラマの登場人物を思い浮かべつつ本作を読んだのですが、そうするとちょうど良かったかも。
やっぱ最高作品はZEROか宣戦布告かな。特殊作戦群を描いた瀕死のライオンも無茶過ぎて面白かったですが。
ドラマに軍配を
★★★★☆
NHKドラマ化された作品。
映像化すると途端に退屈になる作品が多い中、これはNHK製作スタッフに軍配が上がる稀有な例。
小説とドラマとでは、微妙にストーリーが異なるのだが、およその登場人物や状況設定などはほぼ同じ。
小説では、作者はきっと広大なストーリー展開を予め企図していたのだろうが、
やや手を広げすぎの感は否めなく、その分展開の軸となるものがぼやけて散漫な印象を受けた。
登場人物が多く、個々のキャラを十分描き切る領域には残念ながら達していない。
ややご都合主義的なストーリー展開が目に付き、場面変更が目まぐるしいため、
物語における時間軸を無視しがちな表現になってしまったのが惜しまれる。
一方、ドラマでは主人公・住本とその仲間が追う1件の事案にフォーカスしたことにより、
当然物語性が高まり、視聴者にはわかりやすくなった。
そうしたことでかえって、小説では曖昧にしか伝わらなかった、
公安や外事と呼ばれる警察世界の背景を自ずと呼び込む効果を引き出している。
別のレヴュアーも書かれているが、素材としては一級品で、
世の中の認知度の低い世界なので、興味のある読者は多いはず。
警察小説の多様化に伴い、今後この「外事」が警察小説の一分野になれば面白いと思う。
私は以上のような感想を持ちましたが、まだ、どちらか一方しか読んで(観て)いない方、
是非両方楽しんでみてください。
おもしろさともどかしさが同居
★★★★☆
最後まで一気に読ませるおもしろさはあります。読んでいて楽しかったです。
しかし、他の方も指摘されているように《フィッシュ》の描写にガッカリさせたり、「小説」としてルール違反と呼びたくなるような構成というか粗さが気になることも事実なので星4つとしました。
素材は超一級ですしタイムリーでもあるし貴重な問題提起にもなっていることは確かです。でも、登場人物をどこまで描くかという点においては、よく書かれた「小説」というよりはドラマの「原作小説」の忘備録・脚注的なバランスの悪い書き込みや描写不足が全編に散りばめられているので、本格的なミステリーや小説が好きな方はガッカリされるかと思います。
ストーリーより公安モノとして
★★★★☆
本書はNHKドラマの原作ということもあり初めての麻生作品という方も少なくなさそうですが、おたく向けかと思うほど詳しい組織の事情が書かれている一方で、登場人物のキャラ設定や内面の描写があっさりしているというアンバランスさを感じるかもしれません。その場合は細かいところは考えすぎずに公安警察の世界を楽しむという読み方もありだと思います。本書は裏の裏、という読者に向けた仕掛けが細かくて私はやや疲れました(笑)。
後半の急展開がやや強引なことや、「フィッシュ」本人の描写が残念なので星ひとつ減点としました。
しかし公安警察や自衛隊の組織モノを書かせたらこの人の右に出る作家はいません。当事者たちも「知らなかった」「上の人たちはしゃべりすぎ」というくらいの内容で、日ごろから取材を重ねていることがうかがわれます。
ゲリラ対策の法制度の遅れを突いた代表作『宣戦布告』に典型的に現れているように、麻生作品は社会にメッセージを発信したいという著者の意思を感じます。今回も活動を表に出せない公安警察の重要性のアピールを目指したものといえますし、私もその必要性があると思います。
日本国家に潜伏する国際テロリストとの攻防を描いた外事警察の活躍
★★★★★
昨年、放送され話題となったNHK土曜ドラマ『外事警察』〈09.11.14〜12.19 O.A. 主演:渡部篤郎〉。本書は『宣戦布告』『ZERO』で知られ、ポリティカル小説の第一人者である麻生氏にNHKからテロ対策をテーマにしたドラマを作るために依頼された原作小説である。
そもそもは一般に馴染みのない“外事”という言葉であるが、本書に登場する外事課とは、日本国内における外国諜報機関の防諜や捜査を行なう組織である。国際テロリストに対し、積極的なアクションの必要の要請に伴ない、新しく創設された『作業班』において、その警視庁外事第3課に所属する作業班班長・住本健司(ドラマでは渡部篤郎が好演)率いる住本班が日本国内に暗躍する正体不明のテロリストグループ《フィッシュ》の正体を掴むために対国際テロ秘匿捜査の精鋭部隊として暗躍する物語である。
登場人物も住本班に属する追尾作業のプロフェッショナルである森永卓也巡査部長や捜査における協力者獲得工作のエキスパートである金沢涼雅巡査部長、同じくアジア系外国人専門のエキスパート・大友遥人巡査部長、数少ない女性公安警察官の中で男性の中でも群を抜く能力を持つ五十嵐彩音巡査部長、外事警察に人生のすべてを懸けてきた愚直な男・久野秀真巡査部長といった兵〈つわもの〉揃いの部下やその上司で対テロリストに保守的な考えを持つ村松久美内閣官房長官(ドラマでは余貴美子が憎々しく熱演)といった一癖もふた癖もある人物が錯綜し、またドラマとは内容が異なっており、ドラマでは物語の重要な役割であった下村愛子(石田ゆり子が熱演)が本作では重要容疑者の妻として捜査線上に名前が浮かび上がるだけというのも特徴的だ。
当初は多大な登場人物や場面の展開により、内容が今ひとつ把握しきれなかったが、後半は、謎のテロリストグループ《フィッシュ》の攻撃により危機にさらされる住本班の緊迫した攻防やクライマックスでの全貌が明かされる息もつかせぬスリリングな内容にドラマとはまた一味違った面白さを感じ、大変読み応えがあり、大いに堪能した。