なぜあの時私は怒ったのだろう、なぜ決められなかったのだろう
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交流分析(Transactional Analysis)に興味を持ち、一冊目に創始者のBerne博士のGames People Playの翻訳を読み、誤訳と生硬さに理解できず、二冊目にこの本を読みました。TAの概略とその実生活への応用を説明してます。
特にTAの基礎については、まったくの初歩からの説明で分りやすく(記憶をテープレコーダーに例えるなど時代を感じさせますが)、専門書を引用しながら書いてあります。Parent、Adult、Childという言葉だけは聞きかじりで知っていましたが、ParentとChildが5歳位までに見聞きしたり感じたりしたことがもとになっているとは驚きでした。今まで知らなかったたくさんの知識が得られ、楽しい読書ができました。さすが表紙に"Over 15 Million Copies in Print"と書いてあるだけのことはあります。
また、TAを応用して、人間の様々な行動の理由、自分の過去の行動の解釈、自分を良い方向に変えて行くにはどうすれば良いか、結婚や夫婦間、親子間の問題など、詳しく説明してあります。手軽に読める交流分析の入門書でもあり、自身の過去の感情や行動に理由を教えてくれて、人生を変えてくれる本でもあります。刊行が古く現在主流の考えと相違があるかもしれませんが、個人的には目から鱗のことがたくさんありました。
なお、この本の翻訳『幸福になる関係、壊れてゆく関係』は抄訳です。省略されたのは第1章、第4章、第5章の一部、第10章、第12章、第13章です。全体の基礎となる第1章と、応用の基礎となる第4章を省略してしまっている上に、肝心な部分の記述に誤訳が目立ちます。これでは読者が、内容を十分理解できないばかりか、著者の言いたかったことを誤解してしまう恐れがあります。
また、TAの入門書として、TA Todayも、Todayというにはいささか年数が経ってはいますが、とても良い本だと思いました。こちらは一般向きの啓蒙書でなく専門家向きの本です。特筆すべきは、英語圏以外の読者に配慮して文章が易しいことです。原稿を非英語圏の研究者に事前に読んでもらい表現を分りやすくすることに配慮しています。随所に演習問題が入る噛み応えのある本です。