十三夜
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明治文学を代表する小説家、歌人である樋口一葉の短篇小説。初出は「文藝俱楽部」臨時増刊「閨秀小説」[1895(明治28)年]。身分違いの夫もとに嫁いだお関は今宵、その鬼のような夫のもとを去るべく決心して実家の戸口に佇んだ。両親に説得され、今宵限り我が身は死んだ気で魂一つになって一人息子の太郎の身を守ります、と通りかかる俥に乗る。車夫の横顔を見るとそれは忘れ難い人の面影。実はお関は嫁ぐにあたってこの人を諦めるため涙を流した。だが、二人は何事もなかったかのようにそれぞれの道へ別れ別れになる。