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イギリスの情報外交 インテリジェンスとは何か (PHP新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: PHP研究所
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歴史研究という枠を超えて組織論的な学びの多い一冊 ★★★★☆
本書では、対ドイツ戦の最中に日本が動き始めるという危機的状況にあった1940年代初頭、イギリスがどのようにインテリジェンスを外交に活用し、結果的には躊躇する米国を引き入れ第二次世界大戦に勝利できたかが分析されている。

組織論・戦略論として一般化できる学びも多かった。例えば、情報不足が政策決定に与える影響の大きさ(例:初期におけるイギリスの極東情報不足が対日政策を後手に回らせた)のは言うまでもないが、情報を集め発信すること自体ではなく、情報を共有して分析・評価する仕組みが大切であること(例:英米の情報機関の対比)や、大量の一次情報が評価・分析されず意思決定者に直接集まり始まると、政策にバイアスがかかりやすくなるという弊害が生まれること(例:チャーチルに一次情報が直接届くことにより硬直化したイギリスの対日政策)など。

太平洋戦争に至る道をイギリスの情報外交という視点から観察した、歴史の読み物としても十分に読み応えある作品だが、大量の情報を収集・分析し意思決定をする現代組織人にとって学びの多い一冊だったと思う。
新書だから仕方ないのか ★★★☆☆
この本のなかの内容は、近代戦について知っている人であれば、特に目新しいものはない。一般人向けに博士論文を書き直さなければならなかったとは言え、もう少し新しい内容・新しい発見があってもよかったのではないだろうか。
情報の収集についてはかなり書き込んでいるが、諜報の本質である敵国に自国の望む方向に誘導する手法そのものについては皆無なのが残念。
日英開戦までが丹念に追える一冊 ★★★★★
第二次世界大戦、日本とイギリス、及びアメリカが開戦するまでの過程を、イギリス側の資料から丁寧に読んでいくというのが、この本の主軸である。
仏印を巡る日英、そしてひきずりこまれた米の対応の違い、その対応の違いを生んだ情報の違いというのは面白い。
初期は情報的に優位に立ち、交渉でも強気だった日本が、徐々にその優位をつめられ、結果的に情報で負け、現代の我々の眼から見ると無謀としかいえない日米開戦に「至らざるを得ない」状況になった過程は、今後の情報戦略にしっかりと生かすべきであろう。
しかし、そのイギリス側でも、日本に対する情報が的確でないばかりに、無用な開戦をしてしまい、結果的に植民地を失ったと云えるだろう。


九月にスターマー特使が来日して三国同盟の交渉を行っていた時でさえ、英外務省では日独間で同盟が結ばれるとは信じられていなかったのである。

という一文は、なかなかに興味深い。
現在の学校教育、社会での常識的な知識では、ドイツとの同盟、三国同盟はそんなあやふやなものではなく、それがあるゆえ、日本、ドイツはより枢軸国として「悪」を押し付けられているように思えるからだ。
その枢軸国を結びつける「日独伊三国軍事同盟」が、連合国側の重要な大帝国イギリスに「結ばれるとは信じられていなかった」程度のものであった。それほどに、あの時点で、どういう勢力図が描かれるかまだあやふやなところがあったというのは、さらりと書かれているが結構重要なことではないかと思う。

また、日米開戦はイギリスの意向であった。真珠湾攻撃を知ったチャーチルは、手を叩いて喜んだ、などという言が伝わっているが、それにも納得してしまうような文もある。

参謀本部や大蔵省は、対日制裁はまずアメリカが行った後、アメリカよりも控えめに行うべきで、その結果日本の矛先がアメリカに向くことを望んでいた。

結果として、戦中戦後通して、イギリスのこの作戦は成功したのだろう。
現在の日本で、反米的な言説を耳にしても、反英ってのはあんまり流行らないのは、経済的結びつきが薄いのもあるだろうが、結局のところこういう大英帝国様のお家芸イメージ戦略、インテリジェンスの勝利ってことなのではないでしょうか。どうでしょうか。

まあそんなイギリスの戦時中の動き、そして日本が「何に」負けたのかが良く分かる一冊である。
インテリジェンスを重視せよ ★★★★★
 インテリジェンス活動と外交が密接に関連する例として、最近公開されるようになった60年以上前の情報を元に、1940〜1941年頃のイギリスにおける対日インテリジェンス活動を詳細に記述してある。

 007でおなじみのMI6というHUMINT(人間による情報収集を主とする)とGC&CSというSIGINT(信号解読を主とする)機関と政府が話の中心である。第2次世界大戦が欧州で始まってから、日本が対米英戦という愚挙を犯すまでに与えたイギリスのインテリジェンスと外交の影響を丹念に追っていく。

 今後の日本は他の先進国なみに、現状の10倍規模でのインテリジェンス活動が必要と思われる。その時のモデルの1つは間違いなくイギリスだろう。
大戦後も含めたもう少し幅広い活動内容が知りたかった ★★★☆☆
2005年7月にロンドンで起こった同時多発テロに際して、MI5はわずか1週間で犯人を特定、さらに容疑者の家屋の家宅捜査をするなど、その迅速な対応に世界中が改めてイギリスの諜報組織の凄さを実感した。国力は衰えたと言っても、世界一流の組織が存在していることを改めて実証したように思う。

本書の感想について。結論から言うと初めの3章はフレームワークや情報ルート、情報処理の役割分担等が記載されなかなか興味深かったものの、4章以降は第二次世界大戦中の2年間に記述が集中しすぎてやや冗長的な印象を受けました。新書の場合論文と違って「浅く広く」にすべきかと思いました。

私はむしろ世界大戦後のコミュニズムとの戦いにおけるMI6の活躍(暗躍?)に関心があったので是非今後はそのようなテーマの本を書いて欲しいと思いました。共産主義との戦い、石油の利権確保、中近東の勢力図(政権転覆)、という切り口でMI6は歴史の教科書にはまず記載されていないような重要な役割を果たしているはずです。続編を期待します。