二つの祖国
★★★★☆
ブラジルに移民した家族が日本にデカセギに帰ってくる。1992年の入管法改正はそういったことを念頭においたものではなかった、しかし時はバブル人手不足と、ブラジルや南米の経済悪化が日本への大量のデカセギ者を産んだ。
ここで描かれている家族は、日本に上手く順応できず、もしくは順応したものの、今度はブラジル人社会と上手くやっていけなくなった、二つの祖国の中でどちらのアイデンテティも持ちえなくなってしまった家族の話である。
海外から看護師、農業従事者を受け入れようという政策。
また、経済悪化はあらたなデカセギ者を生み出すだろう。日系人はいままでブラジル社会の中でも孤立した存在であり、自分は本当は日本人だという意識が強い分、日本での衝突は強い。
今後日本の経済衰退のともない、デカセギ者も減るだろうが、この本にかかれたような問題はずっと続くであろう。
移民コミュニティは、日本社会の将来の形か。
★★★★★
08年、都市生活者の不景気からのあぶれを、中南米へ農奴等として受け入れてもらった棄民政策より100周年。
ブラジルでは、1945年の敗戦後、日本の敗戦を信じない者が8〜9割おり、臣道聯盟なる団体を創り、敗戦を唱える認識派を攻撃し、天誅の名でリーダーなど23人を暗殺し、147人の負傷者をだした。
90年日本では、公式には親族訪問だが、実際は3K労働力を補うため、日系人と配偶者が定住者として滞在できるようになった。
以来ブラジルより10倍稼げる日本へデカセギする者は多いが、派遣労働などで自信や自尊心が奪われ、お互いが繋がれず不信感・怯えを持ち、そのストレスを消費行動にぶつけるしかないにもかかわらず、社会的に放置されている実態を本書は浮き彫りにする。
就職差別・義務教育の就学義務すらない中、外登証に替わる在留カードで国が一元管理を予定しているが、介護士受け入れも始まっているのに総合受け入れ基本政策もなく、働けない者は日本・外国人問わず退場(自死・退去)しろとの、政府の思惑が透けて見えるようだ。
確固としたコミュニティを作れない南米からの労働者
★★★★★
いじめや差別によって、日本社会からドロップアウトしてしまう南米からの日系外国人たち。
アイデンティティを持ちきれない理由は、しっかりとしたコミュニティを作れないから。
数十万人もいるグループなのに、コミュニティのありかたは面的ではなく、さりとて点的でもない。
いわばシミ的?
外国人労働者として日本で十数年暮らし、本国に戻ってもまた自分探しが始まる。
淡々とした文章の間に、やるせなさと暖かさが伝わってくる。
日本で暮らすブラジル人は30万人
★★★★☆
1908年に日本はブラジルへ初めての移民を送り出しました。それは今から約100年前のことです。
そして1990年に日本の法律が変わり、3世までの日系人およびその家族は合法的に日本で働けるようになりました。すると、昔とは逆にブラジルの日系人が日本に出稼ぎに来るようになったのです。現在、日本で暮らすブラジル人は30万人を超えるのです。
何年か働いてお金を貯めたら、国に戻って大きな家を建てて楽しく暮らそうというのが、彼らの目標なのですが、仕送りするだけで精一杯だったり、身体を壊してしまったり、なかなか上手くはいきません。
ある程度お金を作って母国へ戻っても、治安のいい日本の生活に慣れてしまうと、治安の悪さに苛立ったり。日本でムダ遣い癖がついて、それが治らなかったり。結局は日本に戻ってきてしまう人が多いというのも、悲しい事実です。
彼らを安い労働力としてしか見ていない企業。外国人だからというだけで差別する人たち。こんな日本でいいのか?という疑問が広がってくるばかりです。