歌集 2月31日の空
価格: ¥0
あまねそう 待望の第一歌集
――――――――
懐かしさって、ぞわぞわする。
東京都荒川育ち、あまねそう。自分を育んできたものたちと向き合い、格闘し、決算をする。
甘い思い出ばかりで生きられるほど、みんな子どもじゃないはずだ。
(歌人 山田航)
――――――――
歌人集団「かばん」に籍を置く歌人「あまねそう」の処女歌集は、201首で綴られた彼の半生。
三十一音で切り取られた過去の断面の数々は、時に瑞々しくというよりも生々しく、幼き日より今に至る折々の視界や湿度や匂い、そして心の陰翳をも甦らせる。
時空を超えて心の息づかいをすとんと現像させるその才が作者の持ち味。
読む者もまた、自分の過去にもシーンは違えど似た翳りがあったことを思い起こさせられる不思議。
そこにいつもどこかせつない味わいが残る。
短歌という表現の面白さを再発見する一作。
【収録歌(抄)】
てつぼうに手のとどかない子のために広がっている青空がある
フロイトとユングの違い説く友の首から生える一本のヒゲ
『基礎問題精講』を解く玉ねぎにすかしたような日の射す部屋で
閉じられて光を持たぬ文字たちが 、 、 。と、消えてゆく午後
僕が僕であろうとすれば花は咲く僕から少し離れた場所で
恋なんて女子が焦がれるだけのものそう思ってた頃の夕焼け
【著者略歴】
1976年 東京生まれ。2007年より歌人集団「かばん」所属。翌年、短歌研究新人賞最終選考通過。教職を経て現在心理職に就く。