全5章の第1章では、マーケティング研究の第一人者フィリップ・コトラーを引用したり、マーケティングの役割が企業内の一機能から戦略的かつ全社的な概念に拡大していることを指摘したりして、概要をわかりやすく説き明かしている。各テーマにシンプルな図解もついており、マーケティングの全体像が手っ取り早く理解できる。
実践のプロセスは、環境分析(第2章)、標的市場の選定と競争優位の構築(第3章)、マーケティングミックスの構築(第4章)の3つのステップに分けて解説している。第2章は、SWOT分析とマーケティングリサーチが柱で、SWOT分析では事例検証も行っている。次の第3章ではセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの各実行方法を、総仕上げの第4章では「マーケティングの4P」とその組み合わせによる他社との差別化、自社の強みへのフォーカスなどを解説している。また、『通勤大学MBA 1 マネジメント』で若干触れた顧客維持のマーケティング戦略を、最後の第5章でまとめて紹介している。
1見開き1テーマの構成で、数多いマーケティング解説書のなかでも簡潔・明瞭さは際立っている。入門書としておすすめである。(棚上 勉)