四月馬鹿
価格: ¥0
――心臓は左側にあるから、左側は守らなくちゃいけないんだ――
雀さんは画家。
雀さんはバーテンダーのバイトをしている。
雀さんは左腕にだけ、刺青を入れている。
雀さんが描いたひとつのアート。
また四月がきた。
また四月がくる。
あたしの辿り着く先は――?
大人の女性に捧げる、珠玉の短編ロマンス小説。
【注】性描写があります。苦手な方は購入をお控えください。
――――本文より(冒頭)
マリア様の唇にキス。弁天様の唇にキス。吉祥天の唇にキス。
彼の左腕に舌を這わせながら、あたしは目を開けている。順繰りに盛り上がった筋肉をなぞりながら、再び肩に視線を戻す。
マリア様の閉じた瞼にキス。弁天様の笑った目にキス。吉祥天の柔和な瞳にキス。
視線をずらすと、傷ひとつない浅黒い肌が目に入る。縋りついた左腕は、赤い炎と青いフェザーで隙間なく埋め尽くされた代物。身体のこの一部だけ分離した、独立したパーツのようだ。これが義手で、日によって、違った文様のそれをつけ変えていると言われても、ちょっと信じてしまいそう。それが雀さんの左腕だった。
――――――
読了にかかる時間 約34分 (500字/分の場合)
文庫本換算 約42ページ(39字×15行)