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健全な肉体に狂気は宿る―生きづらさの正体 (角川Oneテーマ21)

価格: ¥760
カテゴリ: 新書
ブランド: 角川書店
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原因と結果は一対一ではない ★★★☆☆
ピンチは、様々な要素が関係した効果であるという件は頷けます。
ピンチの原因は一つとは限らない。
だから、要素のうち変えれるものを変えて状況を変化させることで、
ピンチから逃れることが出来るのかもしれません。

春日氏は、精神病患者に、掃除を勧めることがあるそうですが、いまやれることをやって、
自分の状況を変化させるのは、確かに効果があるはずです。
私の場合、朝から部屋の埃を掃き出し、不要と感じるものはばっさり捨ててしまった後のお茶で充実感に浸れ、
さて次は何をしようかという気になります。

自分というものが様々な関係から成り立っていると考えると、自分とはこういうものだと
言いきれなくなります。言語表現化という壁がありますし、決めてしまった段階で、自分という
本質に近づくことを諦めたことになりますから。
だから、「自分探し」は、やめた方がよいとは思いません。試してみて、どんなことを得るか、
が大切と考えていますから。
精神科医相手だけに身体感受性に着目して論じた一冊 ★★★★☆
 印象的なのは、春日武彦さんが語る精神病の世界というものが、カリスマ的な精神科医である斉藤学さんと同じ軸を持っていたことでしょうか。共依存というものをもっとも避けねばならぬというように述べたり、広義での虐待の世代間伝播であるとか、そういう診る際の理論の軸は同じようなところなんだなと。

 人格障害(パーソナリティー障害)だとか、統合失調症への見解に興味深いものがあったかなと。グループワークの効果というものにも触れていました。都立松沢病院という日本で最初に精神科の病床を置いた病院に務めている経歴のある春日武彦さんの精神病全体への視野がどのようになっているのかを知れるのはなかなか興味深いのではないかと。

 ただ、内田先生との対談のせいか、それとも日常的にそう思われているのか、その精神病の異常というものへの捉え方に、”本人たちが多くの中からそれを選択しているが故の病み”という描き方がなされていたのが色々を思わされるものでありました。

 春日武彦さんのみの著作となると精神病やら異常やらをホラーチックにまとめあげた本を読んでしまったので、ちょっと怖くて進めないところがありました。”問題は躁なんです”という本を随分前に読了していますが、躁的な人というものの人生の描き出し方は自分たちと何処かで重なるようにして描かれるものですから、心底怖くなりましたね。あ、本棚を見たらもう一冊買ってありました。読んでみましょう。

 本作は内田樹先生の身体論という部分が大きくクローズアップされている本であると思いますので、興味のある方は読んでみるといいと思います。ただ、内田先生も言われていますが、あまりに身体と脳という風に分けて置いてしまうと二元論になり、そうすると結局は脳的世界になってしまうという注意点も踏まえてでしょうか。繋がってあるものですからね、両者は。

 まぁ、パーソナリティー障害の人や統合失調症の人が読むと、意外な方向から頬をぶたれたような印象を受ける本じゃないかと思いますので、メンタル系の人にはお薦めしていいのかわからない本ですね。でも、身体感受性という部分に着目するというのには良いと思いますね。それに、精神病全体を眺めるのに一歩引いて見た視点が欲しいというときにも良いのではないでしょうか。改めて整理が付け易い印象がありました。
自分探しの客観性ある話し ★★★☆☆
聡明で多弁な内田先生とポイントを突く疑問を投げかける春日先生の対談形式の本です。論点は世代論からはじまって、お2人の得意な切り口から、負け犬論争、フェミニズムの問題、自己決定、「自分探し」の問題や、果ては家族のコミニュケーション、ガン告知まで、話題が広がります。

どの話題にも大きく頷ける話しが多く、目からウロコや、膝を打ちたくなる話しが多く、特に内田先生のファンの方にはオススメの本です。何故なら7割方を内田先生が話しているからです。もちろん春日先生も会話されていますが、春日先生が問題提議した後に内田先生が細かく説明してくれる感じですので、どうしても内田先生の方が長くなります。もちろんいつもの内田、春日両先生の得意分野を、ですけれど。


私はごく最近に内田先生の本を読み始めたのでまだ理解が浅いのかも知れませんが、深く納得できる話しが多かったです。とくに中腰力にまつわる話し、「両論併記」と「継続審議」は深く同意致しますし、それに例え方に、相手に伝わらなければいけないという感覚を私は感じ取れたので、そこがまた良かったです。また、「常識」の持つ『そこそこの強制力はあるけれど根拠はない』という強みを、常識は変化するからこそ、限定された地域と時間の中でだけ通用する強みを、原理主義にならない強みを、もっと使えないか?という部分も膝を打つ話しでした。


ただ、気になる部分もありまして、それは「自己決定」を放棄したがるフェミニズムの方の話し(離婚して一人で好きなように決定して生きている方が、もう一人で好きに自己決定する事に飽き飽きした、という発言)を聞いて(ここに至るまでも様々な経過があるのです、「リスクヘッジ」の話しとか)、びっくりするのですが、自己決定できる贅沢に慣れただけの話しで、私にはただの「さびしんぼう」のないものねだり」なだけなのではないか?と感じました。自分の責任で好きにする自由はなかなか得がたいものであるし、そんなに簡単に手放せないと私は思うのですが。


「さびしんぼう」と「ないものねだり」の両方を持つ方々のなんと自分勝手な、自分丸投げ状態か、と思うと悲しくなりますが、結構たくさんいますしね。普通恥ずかしくなると思うのですが、恥ずかしいと感じる客観性もない状態なのだと思うので、余計に悲しい。


もちろん自分探しの話しも両先生の得意の話しですし、そこはとても面白いです。私も 『「自分探し」は広義に解釈すれば、していない人はいない。それそのものがいわゆる人生といっても良いと思う。しかし、狭義の意味において、「本当の」が付く「自分探し」は逃避や幻想や妄想である。謙虚さの、客観性の無い所に正当な評価は現れない。』と考えますから。ただ、自分探しをしたがる人々には、なかなか届かないですし、そんな人がこれだけ増えてしまった為の常識がチカラを得るのかと思うとちょっと恐いです。


また、対談形式な為に、本当は少し考える間があって話しているのでしょうけれど、その間が本では表現されていない上に、内田先生が分量多く話されているために、ちょっと軽く感じられる所が気になりましたが、ま、それも内田先生の内田先生っぽさと言えなくも無いかも知れません。


「健全なる肉体に狂気は宿る」、名言です。狂気の種類に興味のある方、内田先生や春日先生がお好きな方、自分の死角に光を当てたい方に、オススメ致します。
肉体に聞くことの大事さ ★★★★☆
興味深い話がたくさんあり、人それぞれ興味をひかれる部分に出会うことができるのではないでしょうか。私は「肉体に聞くことの大事さ」を改めて認識しました。脳だけで行動してしまうとバランスを欠いてしまうところ、「肉体の声」に従うことでバランスがとれる。また、「常識的な人間」の意味と必要性も勉強になりました。
対談になってなくてもいいではないか! ★★★★☆
近頃の考え方が似ているもの同士が「そうだよね!そうだよね!」と確かめ合うだけの
対談本ならぬ「馴れ合い本」の際たるもの。
しかし、馴れ合いだと悪いのかといえばそうではないし、
考えの違うもの同士を無理やり戦わせて本にしても必ずおもしろいというわけではない。
要は話している内容だと思うのだ。

第一この本は半分以上、下手したら7割近く内田樹が喋っている。
(対談本で普通の人よりもおしゃべりだと分かる人がたまにいる、斉藤環とか)
春日氏の存在はどちらかというと臨床の現場からの注釈として読むべきだ。いわば合いの手。
内田ファンは間違いなく買いだ。
世代論、自分探しを独自の技法で切り崩している。

対談本マニアには評価は低いだろうが
本が好きな人には良い分量と内容だと思う。