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幾何学〈1〉多様体入門 (大学数学の入門)

価格: ¥2,730
カテゴリ: 単行本
ブランド: 東京大学出版会
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多様体論の素晴らしい入門書 ★★★★★
現代幾何における多様体の基礎理論の重要性は言うまでもないが、我が国には松島先生の『多様体入門』という決定的な名著が存在する。しかし、この名著の難点は初学者にとって極めて取り付きにくく、通読が困難な事にある。多様体の基本を初めて学ぶ人向けの、取り付き易く、発展的な学習にも誘ってくれるような入門書はないものか。本書はこの要望に応える素晴らしいテキストである。

先ず、ユークリッド空間の部分多様体につき、陰関数表示、グラフ表示、パラメータ表示の同値性がキッチリ証明されているのが良い。標準的に定義される微分可能多様体とユークリッド空間の部分多様体との間に本質的な差異はないと言うのはホイットニーの偉大な業績であるが、ユークリッド空間の部分多様体のパラメータ表示はミルナーの著書などにも使われているので、これらの概念の同値性に慣れておいて絶対に損はない。

次に、接ベクトルには、多様体上の曲線の接ベクトル(方向微分)と関数環の微分という2つの同値な定義が可能であるが、本書で採用されている方向微分としての幾何学的な定義の方が直感的で初学者には分かり易い。更に、本書の後半で詳しく解説されているベクトル場とその積分曲線としてのフローとの間の相互関係を理解するにも、この幾何学的なイメージを持つことは決定的に重要だと思う。

この他にも、変換関数によってベクトル束(特に、接束)やファイバー束を構成するという実例が示されており、著者の豊富な教育経験に裏打ちされた本書の例題と問題は非常に巧みに配置されている。多様体上の関数と多様体間の写像、ベクトル場とフロー、更にリーマン計量という基本概念だけに限定して、これほど分かり易く魅力的な多様体の世界を紹介する本書は初学者への最良の入門書になるだろう。