なんと英訳登場
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あのヘルマン・ヘッセ永遠のベストセラーが英語版で出ました。 タイトルの“Prodigy”というのは“神童あるいは天才児”という意味ですが、不思議なことにアメリカで出ている翻訳本のタイトルは“Beneath the Wheel”で日本語と同じく“車輪の下(に)”です。 それはさておきこの作品、日本では青春期に読むべき世界文学の筆頭株の地位を与えられてきたような作品です。 英語学習者の中にも、英文で読んでみたいと思った方も居られるのではないでしょうか?
最初の3−4ページはちょっと文章的に複雑な英文も見られますが、あとはわりとすんなり読めます。 ドイツ語独特のちょっと変わったボキャブラリーは巻末に全て訳が出ています。 それにしてもこの作品、子供時代に読んだ時より大人になってからの方がずっと胸に迫ってくるものがあります。 恐らくヘッセその人もこういう少年時代をすごしたはずなのですが、やがてノーベル文学賞を受賞するほどの子供なら、学校の成績がずば抜けていいのも無理はないーただしそれは必ずしも好きで猛勉強しているわけではなく、あくまでも義務感や周囲の期待に応えるのが(人に喜ばれるのが)好きだったからに過ぎないわけです。 ところが周囲の大人たちはこの子はやがて“偉い人”になる(べき)のだーと、勝手に勘違いして詰め込み勉強を強いるようになります。 勿論、その大人達の“偉さ”の概念は世俗の手垢まみれの小市民的偉さにすぎないわけで、それに応えることが出来ない少年はやがて破滅していきます。
今振り返って見て面白いのは、この作品、中高生ではなく大人たちこそが読むべき本だと思うのですが、なぜか夏休みの読書感想文の課題などにもよく挙がっていましたーということは大人たちはこの作品の内容を理解せずに子供たちに読むことを勧めていたのでしょうか? わかっていたらとても勧められないと思うのですがー。 −いや、彼らは本当に読んでいたのでしょうか?