カフェと書店(リブレリア)を融合させたこの店は、メキシコらしく底抜けに明るい。本がびっしりと並ぶ黄色の壁に、緑色の手すりのある螺旋階段、レトロなランプが空間のアクセントになっている。店は、1940年代に建てられた家を改装して作られた。かつて中庭だった場所は吹き抜けに生まれ変わり、改装前に生えていたのと同じ、オレンジの木が植えられた。肉厚の葉の観葉植物も空間いっぱいに育っている。2階には大きな窓とバルコニー。日に焼けた美女が手を振る、メキシコ映画のワンシーンのような雰囲気だ。三世代の家族連れがブランチをとり、休憩中の警官もほっとくつろいだ表情を見せる店。明るく温かい家のような本屋さんに、今日もさまざま人たちが帰ってくる。
ポルアは、1900年創立のメキシコの書店チェーンで、出版も手がける老舗企業。「すべての人たちに本を提供する」をモットーに、スペイン北岸のアストゥリアスからの移民、ポルア家の三兄弟が設立した。今では、およそ60店舗をメキシコ国内に展開。インテリアは店によって雰囲気が違うが、どの店も壁一面にぎっしりと並んだ本がトレードマーク。チャプルテペック森林公園店は、「たくさんの人たちに足を運んでもらい、ポルアの精神を知ってもらう」というコンセプトで、2011年にオープンした。自然と一体化した建築も、そこで売られている本も、メキシコの魅力を象徴するような本屋さん。南米一の公園に誕生した名所で出会う本は、とりわけ新鮮な魅力を放つ。
創業は1906年1月。ポルトガル第二の都市に見事な建築の本屋が開店したというニュースは、地元ポルトガルやリスボン、そしてブラジルのサンパウロやリオデジャネイロの新聞雑誌でも取り上げられた。店のお披露目会に招かれた作家やジャーナリスト、知識人たちは、その美しさに驚嘆の声を上げたと伝えられている。フランス人技師、グザヴィエ・エステーヴが設計した建物は、ネオゴシック様式で、アールヌーボーの影響も色濃い。白いファサードには、「芸術」と「科学」を象徴する2人の女性像と、植物の模様が描かれている。時間に磨かれた木の床、ベンチ、平台が、飴色に光る。平台は、下の段にも本の表紙を見せて陳列できる構造だ。書棚の間には、レース模様の天蓋に縁どられたポルトガルの文豪たちの胸像があり、柱にはその名が刻まれている。
ディエチ・コルソ・コモは、『ヴォーグ・イタリア』誌の元編集長、カルラ・ソッツァーニさんが立ち上げた文化商業施設。東京、ソウル、上海にも支店を展開している。エントランスをくぐると緑がいっぱいの庭が広がる。普段は、テラス席で優雅にランチを楽しむ人たちでにぎわうが、ミラノコレクションやデザインウィークの期間中は、カクテルパーティーが行われる場所でもある。その奥にある建物は、伝統的なパラッツォ。1階にレストラン、カフェ、セレクトショップ、中2階にギャラリー、2階に本屋がある。さらに階上は、3室だけのプチホテル。ファッションやデザイン、アート中心だが、「本は消費し、捨てるためにあるものではない」という考えから、普遍的な価値のある「古典」を置いている。これに、「未来の流行を予測する」テーマの本が加わる。
2005年、ハワイ育ちの起業家ジョッシュ・スペンサーさんが、ロサンゼルスの小さなロフトでネット書店を開業。イーベイの安価な古書店からスタートし、2009年、ダウンタウンに実店舗をオープン。2011年、現在の場所に引っ越した。店は1階と中2階に展開する。1階は、高い天井を白い円柱が支え、銀行のロビーだった往時を思わせる広々とした空間。SF映画に登場する不思議な機械のような本棚が並び、あちこちに置かれたレザーの椅子は、往時の銀行家がゆったり座って葉巻を吸っていそうな雰囲気だ。壁には、本が流れる川のようなレリーフが趣を添える。中2階は、低い天井に届きそうな本棚が隙間なく並ぶ。迷路のようなフロアを探検していくと、曲線や不規則な幾何学形で構成された不思議な棚、本のトンネルなどの仕掛けが次々と現れる。