トム・デマルコの著作は、どうしていつもこんなにエキサイティングで説得力にあふれているのだろうか。それは、彼がプロジェクト管理において常に人間を中心に見つめ、現場にこだわる姿勢を貫いているからに違いない。
本書は、『ピープルウエア』(原題『Peopleware』)、『デッドライン』(原題『The Deadline』)などの著書で知られ、マイクロソフト、アップル、ヒューレット・パッカード、IBMなどのコンサルタントを務めるトム・デマルコが、プロジェクト管理における「ゆとり」の重要性と、これまでの効率重視の管理方法への異論を唱えたものである。
デマルコは、生産現場のブルーカラー労働者を対象に開発された管理手法は、今日の知識労働には当てはまらないと指摘する。「人間は時間的なプレッシャーをいくらかけられても、速くは考えられない」というリスターの法則を引用し、管理者がプレッシャーをかけることの無意味さを指摘したり、強気のスケジュールや時間外労働が結果的に失敗に終わる理由を述べたりするくだりは、普段非生産的な管理のもとであえいでいる部下・中間管理職にとって痛快極まりないだろう。デマルコは、このようにプロジェクト管理にまつわる誤解を指摘したうえで、プロジェクト管理を成功に導くために何が必要か、自分なりの考えを示している。
ユーモラスなたとえや衝撃的な事実、すべて実名を挙げてなされる痛烈な批判は、管理者に新たなプロジェクト管理の視点を提供してくれるに違いない。知識労働に携わるすべての人におすすめしたい1冊である。(土井英司)
様々なビジネス書、自己啓発本などの内容がさらっと1冊にまとまっている不思議な書
★★★★★
学習する組織やプロジェクト管理について、「ゆとり」の大切さを述べている。本当はムズカシイ理論が隠れているのかもしれないが、非常に平易な文体で書かれているので、読みやすかった。
例えば、会社では効率化を進めるために人を減らしたり、仕事を出来るだけ早く行うように圧力をかけたりする。本当にそれで効果が上がるのだろうか。
組織には一見無駄のように見えるサポート役、本書ではタイピストや秘書、がいる。しかし、コストを削減しますと言って、タイピストをクビにした結果どうなったか。優秀な意志決定者がPCのセットアップをしておぼつかないタイピングで文書を作成するようになった。生産性は上がったのだろうか。また、知的労働者は圧力をかけられても、残業はできても、早く考えることはできない。
中間管理職が現業に没頭し、管理者としての仕事をしない状態で、組織の変化や学習、リスク管理が出来るものなのだろうか。人に効率性を求めすぎると、ルーチンワークに100%の時間をかけて忙しく見えるように動いてしまう。組織にとって非常に不利益なことだ。「ゆとり」を軸に様々なことを考えさせる1冊。
ゆとりが、改善ののりしろ
★★★★★
ゆとりがないと、改善できないという話がつかみ。
P37
「NPO(非営利組織)では、管理をしないか、または管理をして全員いなくなってしまうかだ。」
「管理者は100%自分に管理権限があると思い込み、私の仕事はすべてを管理すること、
部下の仕事はすべてをやることだと思っていた。違った考えをするまでには、長い時間がかかった。」
非常にうまい点を捉え方をしている。
ファンが多いのもうなづける。
効率を非難
★★★★☆
「仕事は効率的にやりたい」
誰もが思い考えることですが、効率化の先に何があるのでしょうか?
恐ろしい結末が待っています。
一番の問題は効率化により「ゆとり」を無くすことです。
「ゆとり」こそが組織にとっても個人にとっても
重要であることを確信できました。
それから、いまだに目標管理をしている組織に対しても
警告をしています。
「目標管理はやめろ」と言い切っています。
論理的に否定していて分かりやすいのですが、
では、私はどうすればいいのかに疑問が残ります。
一度、著者デマルコ氏と話をしてみたいと思いました。
ゆとりは一種の投資・・・「刃を研ぐ」ことの重要性
★★★★☆
既に発行されて7年経ちますが、毎年、1度は手にとります。
物語形式ではないので、読みやすいとは思いませんが、
折に触れページをはぐると、その時々で新しい発見があります。
「ゆとりは一種の投資である。ゆとりを無駄と考えず投資と考えることが、
ビジネスを理解している組織と、単に忙しいだけの組織の違いである。」
組織を機敏にするためには、ゆとりが重要。
組織をぎりぎりにまで効率化すると、組織が硬直化し、
柔軟性が失われ将来に対する機敏性が失われる。
現在のような変化への対応を要求される状況では、
ゆとりを持たせることが組織にとって必須、ということがわかる。
「ゆとり」は怠惰ではなく、将来に対する準備であること。
「ゆとり」を外側から
★★★★☆
→この本は、
なぜ、今の時代に「ゆとり」が必要なのか
どうやって、その「ゆとり」を取り戻したらいいのか
ということを教えてくれる本です
→「達成できるはずのない期限」を設定し、
「形だけの生産性」を掲げ、
「人を代替可能な部品」としてか捉えず、
「未来を描くこと」を軽視してきた
知的労働者に対して..
→散りばめられている逆説的な説明、比喩、暗喩が、
その「ゆとり」のなぜや、どうやってを
外側から教えてくれます
それは、
正解を明示することより
正解を醸し出すほうが
「本質」を理解するためには、よりよいだろうという
著者のメッセージなのでしょう
→..ただ、一部、皮肉が利きすぎるところがあり
読んでいて 体が重くなるというか
心が重くなるというか そんな感じがすることもあります
(これも、著者の計算の内だとは思いますが..)
著者のイジワルやイタズラに負けないよう
精神的に安定している時に読むことをお奨めします!
→この本の英題は「slack」
辞書で調べたら「ゆとり」という言葉ではなく
「緩み」とか「たるみ」という言葉が出てきました
ここらへんは訳者のセンスにかかってくると思いますが
私としては、いい日本語訳をあてはめたなと感じています..