土佐日記 現代語訳付
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(第2版について)
いくつかの誤植を訂正しました。2016.7.10
(土佐日記について)
土佐日記は、平安時代の日記文学の傑作です。紀貫之が、土佐国から京に帰る最中に起きた出来事を、作者を女性に仮託して虚構を交えて綴ったものです。成立は承平五年(九三五年)頃といわれています。
日本で最初の日記文学であり、また紀行文とも言えます。この土佐日記は、その後の女房たちによる女流かな文学の魁となりました。この後に続く『蜻蛉日記』、『和泉式部日記』、『紫式部日記』、『更級日記』などの作品に大きな影響を与えています。
延長八年(九百三十年)から承平四年(九三四年)にかけて、紀貫之は土佐国に国司として赴任していました。その任期を終えて土佐から京へ帰る貫之ら一行の五十五日間の話を、書き手を女性に仮託して書いています。ほとんどを仮名で日記風に綴った作品で、五十七首の和歌を含む内容は様々ですが、中心となるのは土佐国で亡くなった愛娘を思う心情と行程の遅れによる帰京をはやる思いです。多様な諧謔に溢れた作品となっています。成立の過程は不明ですが、おそらく帰京の途上で漢文の日記をつけ、土佐日記を執筆する際にはそれを参照したと考えられています。
(紀貫之について)
紀貫之は、平安時代の歌人です。また最初の日記文学「土佐日記」の作者としても有名です。紀友則はいとこにあたります。
延喜五年(九〇五年)、醍醐天皇の命により最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』を紀友則・壬生忠岑・凡河内躬恒と共に編纂し、仮名による序文である仮名序を執筆しました。(真名序を執筆したのは紀淑望)。
やまとうたは人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。
で始まるこの仮名序は、後代の文学に大きな影響を与えました。
(この本について)
原文のテキストは青空文庫より収録しました。底本がかなり古いものですので、適切にふりがなや送り仮名を補い、明らかな間違いと思われるものは訂正しました。また旧漢字は新漢字に直してあります。
現代語訳については、編集者が様々な文献に当たり、最も適切と思われる訳を付けました。分かりやすさを第一義に考えましたので、厳密な意味で逐語訳になっていない部分もありますが、ほぼ原文の意を伝えられたのではないかと思います。また、適宜、注も加えて理解を助けるようにしてあります。
(古典教養文庫について)
古典教養文庫は、日本のみならず広く世界の古典を、電子書籍という形で広めようと言うプロジェクトです。以下のような特長があります。
1、古典として価値あるものだけを
これまで長く残って来たもの、これから長く読み継がれていくものだけを選んで出版します。
2、読みやすいレイアウト
文章のまとまりを、適切な改ページで区切って、Kindleはもちろん、iPhoneやAndroidなどのスマートフォン、iPadなどのタブレットでの読書に最適化しました。また索引を付けましたので、目次から直接アクセスできます。
青空文庫をベースとしている場合も、適切に処理してありますので、そのまま青空文庫の物をダウンロードして読むよりも格段に読みやすくなっています。
3、美しい表紙
プロのデザイナーによる美しい表紙をつけました。書籍と関連づけられた美しい表紙で、実際の本を読むような感覚に浸れます。
4、スピーディーな改版
紙の本と違い、誤植の修正や改訂などすぐに対応でき、刻々と進化を続けます。
5、手に入れやすい価格
「価値ある古典こそ低価格で」のモットーから、古典教養文庫は、一番高い物で300円で、そのほとんどが100円となっています。