インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

記憶喪失の男 せつない話

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
Amazon.co.jpで確認


     ♦ ♦ ♦

「うー……、いいぞ」
 低い声で呻きながらマドラーをゆっくり出し入れさせていた。なにしろスーツだからよけいに卑猥な姿だし、顔だちだって男っぽくてモテそうなのが、首まで真っ赤にしてあえいでいる。そこまでじっくり見ていたのに、気づくまでタイムラグがあった。
「あっ……」
 思わず口を押さえて言葉を飲んだ。
 高次?
 よく見れば間違いなく高次なのだ。だけど十年ぶりだからなのか、とにかくだらしない雰囲気になってしまっていたからか、見違えた。高次は少し太ったようだった。デブじゃないけれど、三十男らしい肉付きのよさが目立つ。そのせいで、よけいにセクシーに見えるのだ。前よりずっと、全身から滲み出す何かがあった。男の性のオーラ、というのか……。

     ♦ ♦ ♦

 22の頃に付き合っていた男と十年ぶりに偶然の再会。男は事故に遭って記憶があやふやで、別れた理由も覚えていない様子。三十代になった二人はもう一度付き合い出すが、あの頃となにもかも変わっていて……。変わったのは相手なのか自分なのか。
 初出『バディ』。「せつない話」シリーズ最終話。読み切り短編。