スタインベックは国家を破壊するものとして、安楽さ、豊かさ、安全性を挙げる。豊かさの結果、アメリカは目標を喪失し、ますます「滅びゆく国民」の様相を呈していると見る。しかしスタインベックは、アメリカの活力を最後まで信じているのである。
「われわれは時に失敗し、誤った道をとり、新しく継続するために立ち止まり、腹を満たし、傷口をなめた。しかし絶対にあと戻りはしなかった。絶対に。」
ここにはアメリカ人に特有の「活力信仰」とも言うべき姿勢が現れているように思う。はるかに長い歴史を持ち、国の栄枯盛衰を記憶に刻んできた他の国の人ならば、運命に対して静かに向き合い、もっと寡黙になるのではないだろうか。
こうしたアメリカ人の特性は、今も確かに存在している。それはアメリカの強みでもあり弱みでもある。スタインベックはこの両側面、すなわち自己をも破壊してしまうエネルギーと矛盾を乗り越える活力という二面性を鋭く見抜いていた。