セックスは性器ではなく、性欲でする
★★★★☆
著者は20代で出会い系を使ったフリーセックス生活を経験し、31歳でAVデビュー、その後AV監督の溜池ゴロー氏と結婚、ライターとして活躍している川奈まり子。
あまたのAV女優や風俗出身者がセックステクニックの本を書いているが(このベスト新書にもたくさんある)、それらの本で奨励されているセックス・テクニックをこの本はほぼ全面的に否定している。セックスで女が気持ちよくなるかどうかは、どこをどう触るかではなく、(女の側が)相手に惚れているかどうかで決まる、という立場だ。セックスは性器ではなく、性欲でするもので、性欲は惚れることで生じる。したがって、テクニックを磨くより、まずは惚れさせることが肝心である。
さらに、「彼女がいつイッたかわからなくても、気にしないことです」(156P)とまで言う。つまり、オルガスムスすらも、必ずしも重要ではないということだ。オルガスムスや「潮吹き」は単に肉体の生理的な反応であって、気持ちよさ(あるいはセックスの価値)と一致するとは限らない、とのこと。
三十代以上の「熟した」女性のパートナーたる中年以降の男性に対しては、テストロステロン(男性ホルモン)の分泌をうながして、男らしさを維持せよ、というアドバイスだ。男性らしさは、同時に暴力性などの短所にもなるが、人生経験で制御できるので、中年以降の男性こそ男らしくあってほしい、とのこと。男らしさを維持する方法については、読んでのお楽しみということにしておく。
履歴に似合わない(あるいは、だからこその)、著者の穏健な倫理観に好感が持てる。
「私はあえて『セックスにはテクニックは100%必要なし』といいたいのです!」
★★★★★
週刊プレイボーイの読者相談コーナーで、川奈さんのナース姿での受け答えを読んでから彼女が好きになりました。
正直なところ、男はセックスで「どうしたら女性をよろこばせられるか、満足させられるか・・」で頭がいっぱい。女も一緒だと思う。
でも、その答えといっても、人それぞれ違うはずだし、年齢、状況によっても違ってくる。
答えが1つじゃないから、ますますわからなくなって、人はマニュアル本やらAV作品やらに頼ってしまう・・
川奈さんの考えはひとことで言えば「原点回帰」かもしれません。
現代の頭でっかちな、自意識で固まったセックス像を、まず拭い去ること。
それを言うために川奈さんは自分の元職場であったAVでのセックスを
すべて疑似・演技であって、本当のセックスの姿ではないフィクションと言い切っています。
また一方で、川奈さんのほとんどすべての性遍歴が自分の手でオープンにされ、
ヤンチャしたり心に傷を負いながらも30代で辿り着いた「本当のセックス」は、
小手先でのごまかしや、変に過激でアブノーマルなプレイとは全く正反対で、
単純に、お互いが「好きだ。セックスしよう!」という思いをいかに高めて持続しているか、が書かれていて、
今の川奈さんのアツアツぶりに、うらやましかったり、心が温かくなったり・・
私は彼女の出演作品は残念ながら見たことがありませんが、
少なくとも私にはこの本での川奈さんは、優しい保健の先生のように思えました。