本書は負債を踏まえて、債券運用について理論と実務の観点から再検討を加えたものである。債券のリターン・モデルはシンプルなものを使用しており、数理ファイナンス的には比較的単純な道具建てによっている。しかし、本書の特徴は理論的な格調を失わずに実務的なディテールにこだわっているところにある。例えば負債サイドを考慮したベンチマーク(P.41),長期債の取引コスト(P.57)、積立不足がある場合のサープラス・アプローチ(P.132)である。特に会計上の債務であるPBOのデュアレーション・コンヴェクシティーを計算して、会社の人員構成や制度内容により大きく異なり、従業員の平均残存勤務期間だけでは決まらないことを実証しているところ(P.83)は示唆に富む。