サリンジャーがその名を世に知られる前の、冊子として収録されていなかった初期の短編が収まっています。
これらの作品は、アメリカではサリンジャーによって指し止めされ販売されていないようで、日本にいる我々としては嬉しい限りです。
この第二集ではライ麦畑の原型『気ちがいのぼく』を読むことができます。（ホールデンが三日間の放浪をせず、そのまま帰路に就くという十数頁の短編です）
これによって数多く出回っている『ライ麦畑でつかまえて』の分析本がそこまで拡大解釈されているわけではないと知ることができます。

彼の作品を青春文学とも、一般のアメリカ文学とも隔てるのは、やはり作家のユダヤ性であり、根底には「もっとも文学的な」要素から常に逸れない態度があるようにおもう。
この訳は、清潔でリズム感とユーモアに富み、「荒地」にしっくりきている。