明かりと邪悪と
★★★★★
『JESUS 砂塵航路4〜銃弾の約束』です。
火野に誘拐された小此木あかり。彼女を助け出すために虎口に飛び込む綾木日奈。兄の仇を討つために、ジーザスに絶望と死を与えようとする「24」の令嬢・三崎しずく。彼女に仕え、ジーザスの命を狙う殺し屋の少女・アッシュ。四者の心が絡み合う戦場に姿を現す「夜魔部隊(ナイトゴーンツ)」。日奈とあかりを救うために「24」と正面から対峙する、ジーザスと台場巽。そして、やはり生きていた鬼刑事・太田忠と、見どころがありすぎて大変な巻ですが、その面白さはますます勢いを増しています。
前作『JESUS』と同じく、
「『24』が狙う品という最大のアドバンテージを握ると同時に、生徒たちという守るべき・救うべき人たちを抱えるジーザス」
の構造を持ちながら、
「カダス共和国でさらわれた教え子の救出」と、犯罪被害者救済武装組織「エレメンツ・ネットワーク」
の二つの新要素が、前作を大きく凌ぐ物語の規模を生み出しています。
感嘆すべきは、七月・藤原両氏の生み出したキャラクター、犯罪被害者である綾木日奈・小此木あかりと、たかしげ宙・DOUBLE-S両氏の生み出した設定、被害者救済のために犯罪者や闇組織を叩き潰す「エレメンツ・ネットワーク」が、当たり前のように本作になじみ、物語を動かしている点です。作品や作者どころか出版社する異なるのに、共鳴し合い、さらなる面白さを獲得してしまう作者四氏の力量には、舌を巻かずにはいられません。
家族を失った心の穴は他のものでは埋まらないという現実。それに対し、「でも、埋めようとするのは無駄じゃないの……。ぴったりじゃなくても、隙間ができても……。たぶん、そこに入ってくる誰かは……きっと同じくらい大切な人のはずだから……」と諭すあかり。彼女の微笑みと優しさが、問題の解決に流血という方法しか知らない登場人物たちが抱く傷を癒すことができるのか? それがかなうことを願ってやみません。
ポッカリと空いた隙間
★★★★☆
火野に誘拐された生徒を救出するため、ジーザスが罠の渦中に飛び込んでいくのだけれど、途中からエレメンツ・ネットワークの台場巽が介入してくる。読み終わってみたら、ジーザスが暴れていたのか、台場巽が主人公になってきたのか分からないくらい。
24の残影がまだまだ影響を及ぼしている。登場する敵たちは、皆それぞれの理由で復讐を口にする。意図せず大切なものを断ち切られた者は、善悪を問わず、失ったものを埋めるための何かを必要とするのだろう。そして、彼らにとってはそれが敵なのだから。
復讐迷路
★★★★★
キングの遺産をめぐる戦いもいよいよ本格化し、面白さもヒートアップ。殺された家族の復讐の為。ジーザスと行動を共にする日奈。恩人である御堂の復讐の為。ジーザスを狙うアッシュ。さらに、前巻から登場した新キャラである24の首魁・みさきの復讐が加わり、復讐の迷路と化した新たな戦場で、ジーザスはいかに戦い、生き延びるのか?そして、エレメンツ・ネットワークや火野の介入はこの迷路をどう変えていくのか?前作の「イージス」でもテロ戦争を題材にした負の心の対立を今回も惜しみなく活用。そして、同じモノを背負いながら、否定の道を歩む少女・あかりの存在は、他の少女達をこの迷路の出口に導くことが出来るのか?隠れたヒロインである彼女に今後も期待しています。また。前作で未消化で終わった火野のドス黒い活躍にも期待しています(笑)