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恋愛論 (ソフトバンク文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: ソフトバンククリエイティブ
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泣いちゃう初恋のお話 ★★★★☆
橋本治『恋愛論』SB文庫

文庫版は2006年刊だけども、もとは講談社から1986年に刊行されています。橋本さんが「恋愛とは…」と一般論を語るのではなく、橋本さんの「初恋の話」を笑いながら、ときに泣きながら、ああでもないこうでもないと語ってくれます。「ああ、あのひとのこと、僕、好きだ」って、やっぱりすごいな橋本さん。付録でついてる幻のマンガ『意味と無意味の大戦争』も、どうにもこうにも、すごいなぁ。ため息しかでない、この平凡な読みの悲しみよ。もっともっと橋本さんの本は読まなくては。
よく理解できなかったけど… ★★★★☆
今から十年以上前、浪人していた時に読んだ。

ごちゃごちゃ書いてあるが、簡単に言うと恋愛は、
A「好きになったら負け」、
B「好きにさせたら勝ち」、
C「好きになられたら身の不幸」、
なのだそうです。
(他に書いてあったことは、正直よく分からなかった。)

当時は、「そういえばそうだなぁ…」くらいに思ったのですが、今となっては「全くその通りだね」といった感じです。
Bはあまりないけど、Aは死にたいほど、Cは少しは経験してきたから。

けど、問題のなのはその「恋愛論」がどれだけ真実に近いかではなく、信憑性の高い一般論が、次にくるであろう個個の事象に対してたいした効力がないことです。
先生、ありがとう ★★★★★
私事ながら、最初に書かせてもらう。
私は今現在22才(来月23才)でありながら、女性と一度もお付き合いしたことがない。性風俗産業も利用したことがないから、要するに童貞ということになるが、そういうのはどうでもよくて、私自身はやはり、「女性と一度もお付き合いしたことがない」ということ、つまり両想いの恋愛をしたことがないということが、ものすごくつらいのである。後輩に指摘されて初めて気がついたことだが、私は22年間恋愛どころか、付き合っていないにしろ、女性と二人っきりで楽しいひとときを過ごしたことが一度たりともないのだ。22才と聞いて中年童貞の方々には、「何をそれしきで!」と鼻で笑われるかもしれないが、つらいという人の内面で起きる感情は他人と計れる類のものではないし、彼らがもしつらい思いを抱えているのであれば、私もそれと同じぐらい、全身全霊でつらいのである。

先日私は数年間ずっと片思いをしていた女性に告白してフラれたのだが、ここまでダメだと私は私の好きになった人とはセックスやキスはおろか、手をつないで歩くことさえ死ぬまで許されないのではないか、という不安と絶望に駆られてくる。

「なんで僕は恋愛できないんですか?僕には恋愛が許されないんですか?」 
それに橋本治は本書『恋愛論』で、こう答えてくれる。

「はっきり言って、恋愛相手に出会えない人っていうのは、別に今恋愛なんかしなくたっていい人なんだもの。恋愛する理由も必要ないから、その人の前には”恋愛相手”なんていうものが出て来ないっていう、それだけなんだよね。」(19p)

では私が「今恋愛をしなくたっていい」というのはどういうことなのだろうか。私自身はめちゃめちゃしたいのに。

「恋愛というものは、『なんでも一人でやれる』という人間と対立して、その修正を迫るようなものだから、『自立』というような近代的な考えと衝突する運命にある」(252p)

「なんでも一人でやれる」とは、つまり自立した人間、そして「強い人間」のことである。私はフラれた直後は死ぬほどつらくて、ご飯がのどを通らなかったこともあるが、それでも「生きている」。それは私が精神的に強いということではないか。ある友人は、恋人との関係を「依存のし合い」と表現した。それは裏を返せば、弱い者同士が寄り添っているということである。私は彼らを軽蔑はしない。しかし、彼らよりも私が強いことは確かなのである。強いが故にフラれた、いや、強いが故に、私は本当は相手の女性を必要としていなかったのではないか?今はそういうように思おうとしている。

井上雄彦の人気マンガ『リアル』にこんなセリフがある。
「あのマジックジョンソンがHIV感染を発表したとき俺は 『なんであのマジックが』と思った
 あれ以来よく考えるんだ 
 神様か仏様か何かそれっぽいのがいるとして
 その神様は『この人間だったら乗り越えられる』 
 そう判断してマジックを選んだんじゃないかって 」

試練は、その試練を克服できる者にこそ降りかかる。結局はそういうことなのではないだろうか。
とりあえず言えるのは、橋本先生ありがとう、ということである。



真剣勝負の恋愛論 ★★★★★
ブームに乗って、恋愛に関する本でも読んでみるかという感じでこの本に手を出すとヤケドをするかもしれない。
「こうすれば、女にすぐにモテる」などという流行りの“姑息な”恋愛指南をこの本に期待してはいけない。

なにしろこの本は恋愛の哲学書である。だが「哲学書=ムズカシイ本」という意味ではない。
著者が自身の実存を晒して、全身全霊、汗と涙を流しながら(実際著者はこの講演中、感極まって泣いた!)語った
講演録である。恋愛というひとつの事柄から「人間とは」「生きるとは」という本質に迫っていく。
他の何に拠るのでもない、自身の言葉と感性に拠って本質に迫るその在り方が「哲学」である。

「恋愛って結局○○ってことでしょう」「男って、女って結局○○でしょう」。橋本治は複雑な(と思われている)
現実の事柄を、「結局」という言葉によって鋭く抽象化、本質化していく。
その度に「そうそう、そうなんだよ」とうなずいたり、時には鋭い矢のように、言葉が私の痛い所を突いてくる。
橋本治を読むときは、いつも闘いである。著者との真剣勝負だ。
いったいどこに涙を流しながら恋愛論を語る文化人がいるだろうか。
この本を読み、橋本治というインテリジェンスが、いまここにわれわれとともにいるということに感謝しよう。

そして、この主要講演録に併録されている有吉佐和子氏への追悼文がまたすばらしい。
ひとりの作家をここまで真剣に見つめ、しかも気取らないことばで書き切った追悼文を私はほかに知らない。
有吉さんの人柄がひしひしと伝わり、美しくも切ない文章がホロリとさせる。
とにかく読むにしくはない。惜しむらくはこの本が絶版であるということだ。
ひとがひとを恋うるということについて ★★★★★
ここまで自分の内面を追求する姿勢に
頭が下がるとともに、その態度こそ「恋愛」
なのでは、と思います。

他の方も書いてましたが、同時収録の
『誰が彼女を殺したか』と題された
有吉佐和子さんへの追悼文は
彼女の作品論・作家論としても秀逸です。
これ以上に優れた有吉佐和子論は読んだことがありません。