いずれも粒よりの作品で、叙情性と意外性に満ちている。結末が先読みできるようで、もうひとひねりあるのがアイリッシュだが、特に表題作の「さらばニューヨーク」にはやられた。読み進めていくうちにいらいらの募る、不可解な作品なのだが、結末を読んだ瞬間に、何とも言えないカタルシスに襲われる。アイリッシュの技巧を改めて思い知らされた。この一編を読むだけでも価値のある一冊だろう。