Destiny's Children三部作の第2巻ですが、前作Coalescentとのつながりは、ほとんどありません。本作は、なんと、ジーリー・クロニクルそのものなのです。
　時代は「真空ダイアグラム」の4000年後、西暦2万5千年ころで、人類は銀河の覇権をめぐってジーリーと戦い続けています。2万年に及ぶ戦争の結果、政治制度も生殖も全て戦争続行のためだけに特殊化され、人々はタンクから生まれ「教義」に従って戦い、少年のまま死んでいきます。しかし、前線で一人の少年パイロットが軍律を破った結果、ジーリーのナイトフライヤーを捕獲したことから、人類の運命は急変していきます。
　Childrenシリーズのテーマは「人類の進化と変容」であり、本編は永遠に続く戦争が人類をどう変えるかを描いて、ホールドマンの「終わりなき戦い」やイラクの地上戦を思わせる描写もあります。しかし、重厚な歴史ものだった前作Coalescentの深みを期待していた人は、良くも悪くも裏切られることになります。
　ブラックホール・キャノン、未来積算コンピュータ、泡宇宙シールド、「宇宙誕生前から存在した生命」、見てきたような銀河ブラックホールの絶景、などなど、ガジェットと驚異がてんこ盛りです。ストーリー展開では多少突っ込みを入れたくなる部分もありますが「祝！！ジーリー復活」（シルバー・ゴーストもね）と割り切って読めば、やっぱりファンには嬉しい一冊です。