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乾隆帝―その政治の図像学 (文春新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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嗚呼惜しい哉惜しい哉:名著作なのに ★★★☆☆
清朝の最盛期最後の皇帝である乾隆帝を、さまざまに残る資料を駆使して描きあげた論述である。さすが中野美代子先生と拍手を送りたくなるような、上質の章回小説を思わせる展開で、読者を引きつけて離さない。だからこそ納得がいかないのが画像である。副題が「その政治の図像学」であることからも知れるように、この著作は大部分が図像の解析を鍵として成り立っている。それなのに新書判であることもあって、殆どの画像は小さすぎて詳細が読み取れず(1ページに絵画が六つなんて頁もある)、カラーは口絵の一枚だけ。これでは、「感嘆したくなる背景の鮮やかなブルー」「まっ赤な服を着た八人のかつぐ駕籠」も実感できず、「絵の下端ぞいのかすかな点線の奇妙な図形」など確認の術もない。さすがに参考文献はきっちり表記してあるが、おいそれと手軽に手にできそうなものでもない。こういう本の作り方が、この面白い本を台無しにしている。結局、著作としての評価は断然星五つなのだが、装幀造本の面からは星一つ。平均して三つにした。ハードカバー版を出してください。
伝統中国の最盛期を築いた皇帝の文化政策 ★★★★☆
本書は、中国最後の王朝清の最盛期を築いた乾隆帝の様々な文化政策およびそこに込められた政治的な意図についての考察をまとめたものである。私はこれまで乾隆帝に関しては、60年という在位期間(祖父・康熙帝の61年を超えてはいけないという想いから60年で退位して太上皇帝になっている)、戦争に勝ち続けて十全老人と称し、版図を最大に拡大するとともに、財政状況を悪化させてやがてくる清の衰退の一因を作った皇帝としか理解していなかったが、こんなにも文化政策に力を入れ、そこに政治的なメッセージを込める活動を行ったとは知らなかった。何しろ作った詩が5万首というのには驚く。満族の王朝が中華を支配しつつ、漢族の文化に心酔し、さらには絵画の遠近法に代表される西洋の文化に接した皇帝が、アイデンティティを保ちつつ世界の中心に鎮座し続けるためにどのような策略を用いたか、例えば今はなき円明園の片隅に西洋式庭園を築いた意図、その設計哲学、そこでの密かな楽しみのための仕掛け、あるいは熱河避暑山荘で増設した建物の配置に込められた意図、イエズス会士の画家にどのような絵を描かせたか等、は読んでのお楽しみ。本書で述べられていることがすべて帝の構想なら、凄い。圧巻はカラー口絵と后妃絵巻だが、本書はその他にも故宮平面図、三希堂のある養新殿の鳥瞰図等資料が豊富である。四庫全書及び帝の暗黒面の記述は付け足し程度であるのが残念だが、清の全盛期を築いた帝の内面を、庭園・建造物・絵画そして詩文から推し量るのも悪くはあるまい。