ミステリアスなムードたっぷりの本ですが、ミステリではありません。だから、サラ・ウォーターズの名前に惹かれ、ミステリだと思って読み始めた人は失望するかもしれません。でも、繰り返しますが、これはミステリではないので、ミステリとしては大したことがない、というのは見当違いではないでしょうか。これは複雑な人間関係の面白さを楽しむ本です。最初はどんな関係かよく分かりませんが、そこがかえって面白いと思います。その関係が明らかになってからは、とてもロマンチックな展開です。あまり深みのある作家ではない感じですが、私はとにかくロマンスが大好きなので、とても楽しむことができました。

時間を遡ってゆく中で、「どうしてこうなったのか」を解き明かしてゆき、
バラバラに見えていた登場人物たちの関係が明らかになります。
他の作品でミステリー書評雑誌の１位になった作者の作品ですが、はっきりいって
ミステリーではありません。「そうだったのか…」と感じつつ最後まで
読み進んでも、驚くような事実が詳らかになるわけでもありません。
したがって、少し読みにくいという気がします。戦中戦後のロンドンの
雰囲気を感じる、という意味では興味深いのですが…。