使徒伝を含む第2巻
★★★★★
聖人伝説の集大成である、『黄金伝説(Legenda aurea)』の文庫サイズ和訳、第2巻である。
13世紀のジェノヴァ大司教、ヤコブス・デ・ウォラギネがラテン語で書いた本書は、
ヨーロッパ文学・美術に多大な影響を与え、ヨーロッパについて学ぼうとするなら必携の書であるともいえる。
この本では聖人たちの伝説的生涯が、短編集のように編まれており、それぞれ10〜20ページ、
聖人によってはなんと5行の人までいたが、とにかく各人あまり長くないので、500ページとぶ厚いが少しずつ読める。
第2巻では聖ウルバヌス、聖アレクシオス、聖ペトルス、マグダラのマリア、また使徒のピリポ、小ヤコブ、ペテロ、パウロ、大ヤコブ、
など50名の伝説を収録。加えて、主のご昇天や聖霊の降臨についてなど、キリスト教の重要な教義の論理的解説が数本ついている。
どの聖人も大体、まず名前の由来・語源的解説から始まり、その生涯(信仰に生き、奇蹟を行って多くの人を改宗させ、
ローマの多神教を拒んだためにつかまって拷問を受け、耐えたのち殉教する、というパターンが基本)を描く。
ローマの神々を徹底的に否定し、キリスト教こそが唯一正しい宗教なりという考えが貫かれている。
聖人たちが弾圧され拷問を受け、火に投じられても火傷せず鉛を飲ませても平気なのに矢が刺さったら死んでしまうなど
つっこみたくなる点も多々あるのであるが、現在もヨーロッパに残る聖堂などの理解も深まるし、注も丁寧で勉強になる本である。