男はあらゆる手段を使って女の下から逃げ出そうとしていた。極限状態にある人間の心理、感覚。逃げようとする者と、それを許さない者の奇妙な間柄。
日本人の感性から言わせてもらうと、日本の純文学の中には「英訳しない方が好かったな。」って言うのが、どうしてもあります。例えば川端康成の「雪国」では、始めの1文から日本語と英語の違いが出でいて、正直日本語の風情と言うか情緒と言うか、は伝えきれていません。しかし、この「The Woman in the Dunes」はそういった違和感を感じさせることなく、不思議な心地よささえある気がします。
公房ファンはもちろん、今までに安部公房を読んだ事がない方にもお薦めします。英語の教材にも面白いのではないでしょうか(日本語の文庫本と一緒に買って)。