設計・製造効率化の本
★★☆☆☆
モジュール化は一般に設計のモジュール化(標準化の一種)と生産のモジュール化(生産性向上策の一種)に分かれるが、本書はこのような概念の説明無しに両者をひとくくりで扱っている。重点は生産のモジュール化に置かれているようだが、ところどころで設計のモジュール化を借り物で展開しているため、自己矛盾を起こしている。そもそも生産のモジュール化は厳密にはモジュール化ではなく、DFMAの領域である。また本来のモジュール化である設計のモジュール化のアンチテーゼでもある。モジュール化の概念と展開方法を学びたい方にとっては、本書は混乱を与えるばかりのように思う。
本書では、BOMとモジュール化については半分ぐらいしかなく、残りは著者が長年設計・製造効率化をコンサルタントとして追求してきた成果を展開している。「あとがき」に「本書には紙面の都合で執筆を簡略化した内容がある」と断っているが、タイトルに関係した部分を簡略化してもらっては読者は困るのである。流行に乗って「BOM」と「モジュール」をタイトルにしたカンバンに偽りありの本であるが、設計・製造の効率化の部分については得られることが多い。
設計/生産部品表と標準化の関係知りたい方向けの書
★★★☆☆
まず、この本を手に取る方は、「モジュール化の単位はどのように考えるべきか」という悩みを持っていると思われる(私がそうである)。 すると、第1章、2章は不要である。この手の解説は他の専門書を読まれたほうがよい。第3章からようやく本題だが、設計構成のモジュール化について、読者に大きく誤解を招くような用語使いがされている。機能モジュールの最小構成単位はユニットであり、モジュールとはそれ自体が独立し、交換可能な機能群である。生産構成におけるモジュールの見方になった時に、アッセンブリ(アッシー)とサブアッシーの考え方が出てくる。これは組み付け単位であり機能モジュールとは意味が異なってくる。問題は、機能モジュールと生産モジュール、およびソーシング・モジュールが相反することであり、この問題をいかに解決するのかを期待していたのであるが、結局、BOMの一般論+標準化+余談に落ち着いている。一番知りたいモジュール境界の設定方法についてはまったく書かれておらず、モジュールをいかに運用するかに主眼が置かれている。話の中心が本題からずれているように思われる。
期待が大きかったので、辛口の批評になってしまったが、設計部品表、生産部品表と標準化の関係を著した著書は少ないので、製品ライフサイクルにおける部品表の役割と標準化開発一般知識を得たい方には良書と思われる。