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モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質 (経済産業研究所・経済政策レビュー)

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 東洋経済新報社
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   社会のシステムとそれを裏づける理論には、ときにパラダイム的変化が起こる。1980~90年代には、市場化の理論とその方向の社会システムの変化が起こった。それ以前にはむしろ市場原理で見逃されていた人間的要因を重視する日本的経営の原理が評価されていたが、市場化の原理が新たなシステム原理として登場し、そして今、モジュール化という新しい組織の理論が脚光を浴びはじめた。分業は作業を分割化し専門化することによって組織の効率を上げる方法であり、複雑な工程を単純化し効率化する方法としてアダム・スミスも重視したことで知られているが、IT化・デジタル化の発展によってモジュール化と呼ばれる一種の分業が、コンピュータ産業、自動車産業、電信・電力産業などで組織革命を生みつつある。本書は、この新しい組織のモジュール化理論の提唱者であるK・Y・ボールドウィンの論文と日本の先駆者である編者たちの論文を含むモジュール化の理論と実例を示す格好の書である。

   モジュール化とは、単なる分業ではない。全体として統一的に機能する包括的デザイン・ルールのもとで、より小さなサブシステムに作業を分業化・カプセル化・専門化することによって、複雑な製品や業務プロセスの構築を可能にする組織方法である。このことにより、複雑性が管理可能なものとなり、相互に調整しない並行作業が可能になり、下位システムの不確実性の問題に対処できる、という。今日のような急激な技術革新の時代には、新しい技術革新が事業成功の鍵を握るが、技術革新は不確実性が大きく、ひとつの技術にかけるよりも複数のモジュールに技術開発を競わせるほうが成功の確率が高い。

   モジュール化の理論と実例を示す本書を読むと、「人間による情報の共有化」「垂直的統合」「匠の技術」を過信し、護送船団的にリスクを分散させてきた日本的経営がデジタル化・モジュール化時代に経済的優位を失った理由のひとつも理解できる。(丸尾直美)

モジュール化の本質に迫る一冊 ★★★★★
巷で聞かれるようになった「モジュール化」。
"それは何ぞや"と明快かつ具体的に答えてくれる本書は、多くの論文のエッセンスを抽出した名著といっても過言ではない。

得てして論文集というのは、全体の印象として論点がずれる傾向にあるが、「モジュール化」を軸に理路整然とした構成になっている。
まずモジュール化について説明し、その後IBMやゲーム・自動車産業などの事例を元に社会に与えた影響、メリット・デメリットについて論述する。そして最後に、実務家を交えたパネルディスカッションを収録している。

従って、学術書にありがちな理論攻めだけでなく、実際のビジネスの中のモジュール化の実際も描かれているため、研究者だけでなくビジネスマンにもお勧めである。


モジュール化の現場が理解できる ★★★★★
●産業構造アーキテクチャ(統合型かモジュール型か)に着目して、各企業の取り組みを理解するために読みました。

モジュール化の効果など抽象的な内容は捨象して、実例に注目しました。 実例としては、ゲーム産業、自動車、半導体製造装置、工作機械におけるモジュール化の取り組みを紹介しています。
特に半導体製造装置などの高度かつニッチな産業に焦点を当てているところが本書の特徴の1つで、私にとって身近な題材であるので興味深く読むことができました

●中でも装置が必要とされる精度を実現するためには、単純なモジュール化が最適になるわけではないことを、各メーカーの取り組み、業績、製品の利用者の状況を紹介しながら解説しており、読み進めることでその産業界の背景や各社の取り組み方をかなり現場に近いところで感じることができました。

2002年の初版ということで、データは2000年ぐらいまでが中心ですので、少々古さを感じますが、モジュール化のためにどんな取り組みが必要なのかを、企業戦略や生産や開発の現場レベルでおきている状況まで理解できました。

●因みに蛇足的ですが、
同時期に「ものづくり経営学」も読みましたが、こちらはモジュール化にとらわれない産業構造の多様性を広く浅く紹介するイメージ。
こちらの書籍は、あまり多様ではありませんが、企業の現場にいる方の意見やインタビューによる調査がわりと生々しく紹介されており情報が深いのが特徴です。

○参考
・半導体装置の解説:中馬宏之氏、青島矢一氏
・工作機械の解説:小林正人氏、大高義穂氏


わかりやすくて便利 ★★★★★
執筆者は、
学界から、青木昌彦(1)、ボールドウィン(3)&クラーク(2)、
柳川範之(5)、藤本隆宏(6)、中馬宏之(8)、
産官界から、安藤晴彦(小論)、池田信夫(4)、大久保宣夫(7)。
さらに、青木、ボールドウィン、榎啓一、橋本浩、国領二郎、桑原洋による
パネル・ディスカッション(10)も収録されている(数字は章)。

モジュール化とアーキテクチャの関係の本質がわかるのは、
第5章「ゲーム産業はいかにして成功したか:アーキテクチャ競争の役割」であり、
モジュール化と組織の関係に若干触れていたのが、
第10章「実践から学ぶモジュール化の意義と可能性」であった。

組織論的には「分権と集権」という旧くて新しいトピックにすぎない、
という感想。
重要!!モジュールという考え方!!! ★★★★☆
今日の市場環境の急激な変化は、流通過程・生産過程に何を求めているのか。その率直な答えの一つは、モジュール化経営の展開、という点に求められる。本書は、モジュール化という考え方について、主に生産過程で生じている現実と理論の紹介をしてくれる。
本書によれば、モジュールとは、半自律的なサブシステムであって、ほかの同様なサブシステムと一定のルールに基づいて互いに連結することにより、より複雑なシステムまたはプロセスを構成するものである。ここで、一つの複雑なシステムまたはプロセスを、一定の連結ルールに基づいて独立に設計されうる半自律的なサブシステムに分割することをモジュール化、ある連結ルールの下で独立に設計されうるモジュールを統合して、複雑なシステムまたはプロセスを構成することをモジュラリティという。
モジュールの考え方は、その基礎に、最終製品の複雑化・製品技術の複雑化に伴いモジュールの概念を導入することで、こうした複雑性を処理する方法論として位置づけることができ、その特徴・便益として大きく3つが指摘されている。①モジュール構造にすると、複雑性が管理可能なものになる、②モジュール化によって並行作業が調整可能となり、モジュール間の相互調整をせずとも同時に行うことができる、③モジュール構造は下位システムの不確実性に強い、これらである。こうした基礎的便益は生産面、設計面、使用面で現れるとされ、具体的には次のような効果があるとされる。例えば、生産面でのモジュール化は柔軟な生産システムが可能となり生産を弾力的に行うことができるようになる、設計面でのモジュール化は製品の多様性をほぼコストをかけずに拡大することができるようになる、使用面でのモジュール化は消費者において構成要素を組み合わせて自分たちの好みやニーズに合う最終製品を手にすることが可能になる、などである。詳細は、本書を参照されたい。
本書は、このようにモジュールという概念を詳細に議論し理解を深めてくれる。その内容は、競争が激しい市場環境において避けることのできない概念であるといっても過言ではない。そうした重要な概念が明らかになりつつある中、次なる課題は、こうしたモジュール化が進むことによって企業を成立させている機能(ex;マーケティング・開発・生産など)はどのように変化するのか、という点であろう。しかし、この点については、稀薄である。
「モジュール化」について、理論から応用事例まで丁寧に解説 ★★★★★
 IT産業やゲーム産業、自動車産業をはじめ様々な産業において、近年ますますその存在感を示している「モジュール化」という概念について、理論から応用事例まで丁寧に解説している。理論の部分ではモジュール化の概念の最初の提唱者ともいえるクラーク氏とボールドウィン氏の論文が掲載され、応用事例の部分では現実世界でのモジュール化事例研究の分野で活躍してきた日本人研究者の論文が並ぶ読み応えある構成だ。

 モジュール化は何もIT産業や自動車産業に限って有用な概念ではなく、あらゆる産業で十分応用可能な、経済学的にも経営学的にも優れた概念であることを本書は強く主張している。もちろんモジュール化は万能の概念ではなく、本書でもどのようなケースに置いてモジュール化することが有効か、その数理的分析がなされている。しかし組織構造や製品設計、技術開発など身近なシーンで見受けられる汎用的概念であり、モジュール化の力が及んでいる範囲の広さを改めて認識させてくれる。本書の原典ともいえる『デザイン・ルール―モジュール化パワー―』よりも現実のビジネスでの事例が豊富で、読みやすいので、モジュール化理解への近道となるだろう。