「謎」と言うシリーズ名が付いているのが、一番の「謎」
★★☆☆☆
「謎」シリーズの第四弾でブレンダーは京極夏彦氏。「謎」、「疑」、「譚」、「情」の4つの区分に分かれている。本シリーズは題名の割には「謎」の無い作品が多く採られているのが特徴だが、京極氏の選択は如何なのだろうか。
(1) 「謎」 法月綸太郎「重ねて二つ」 都筑道夫「マジック・ボックス」
両者とも小劇場のコントの様で、"謎"とは縁遠い。
(2) 「疑」 夏樹静子「暗い玄海灘に」 松本清張「理外の理」
前者は平凡なストーリー展開で、"疑"惑が拡がって行く創りになっていない。後者も結末がミエミエで、清張にしては底が浅い。
(3) 「譚」 山崎洋子「熱い闇」 陳舜臣「室蘭と二人の男」
前者は狂女の戯言をそのまま綴っただけ。後者は一応の追想"譚"にはなっているが、敢えて取り立てる程の無い物語。
(4) 「情」 山田正紀「別荘の犬」 連城三紀彦「黒髪」
前者は平板とは言え、舞台設定の巧さで"情"を感じさせる作品となっている。後者は連城氏の初期短編集で読了済みだったが、連城氏らしい女の"情"念と"謎"の組み合わせで、本作中では一番の出来であろう。
「情」の二作を除くと一様にレベルが低い。ブレンダー京極氏の名前に惹かれて本作を紐解いた方は肩透かしに合うと思う。「謎」と言うシリーズ名が付いているのが、一番の「謎」とは情けない。