やっぱりミステリーは面白い。
★★★★★
日本推理作家協会アンソロジー1972,1982,1992の3年分から恩田陸さんが8篇を選んだ短編集。
選者の恩田陸さんが解説で「やっぱりミステリーは面白い。」と書いているように、どの短編もとても面白くてミステリーを堪能させてもらいました。
とくに面白かったのが
長井彬さんの「帰り花」と
阿刀田高さんの「マッチ箱の人生」
「これはどうなるんだろう?」と読む側に疑問をもたせたうえで
謎を引っ張り、最後にきれいに解き明かしてくれる気持ちよさがどの作品でも楽しめます。
選者のミステリーに対する愛情が伝わる素敵な解説も読み応えがありました。
この本、お買い得でした。
1972年、1982年、1992年の作品からのセレクション
★★★★☆
◆「一匹や二匹」(仁木悦子)
櫟究介(あだ名はオバQ)と杉岡康志(あだ名はコーヒー)は空地で子猫を二匹拾う。
二人は飼い主になってくれる人を探すため、ほうぼう家を
訪ねていたのだが、偶然、ある家で死体を発見してしまう。
究介は、現場から立ち去っていく男の姿を目撃するのだが、
その人は究介のよく知っている人で……。
ミステリというよりは、清く正しいジュヴナイルといった印象ですね。
また、初出が1981年ということで、その時代の雰囲気を味わうこともできます。
子ども同士の無邪気なやり取りや大人との関わり方、ご近所付き合いなど、
現代では喪われてしまった人情や牧歌的な光景が封じ込められています。
恩田シェフが選ぶ八つの短編ミステリ。なかでも、仁木悦子と天藤真の作品が素敵でした
★★★★☆
日本推理作家協会の過去のアンソロジーから、推理小説家の選者が、担当した年の中から気に入った短編を選んでベスト・セレクションとするこのシリーズ。東野圭吾、宮部みゆきに続いて、第3弾の今回は、ふたりに並び立つ人気作家・恩田陸が選者として、1972年、1982年、1992年のアンソロジーから作品を選んでいます。
掲載順に、佐野洋「死者の電話」、仁木悦子「一匹や二匹」、戸川昌子「眠れる森の醜女」、天藤真「純情な蠍(さそり)」、高橋克彦「奇縁」、馬場信浩「アメリカ・アイス」、長井彬「帰り花」、阿刀田高「マッチ箱の人生」の八編。このなかでは個人的に、仁木悦子と天藤真の短編が「当たり!」でした。
◎仁木悦子の「一匹や二匹」・・・・・・小学校六年生の櫟究介(くぬぎ きゅうすけ)が活躍するミステリ。メイン・ディッシュの殺人事件への入り方、ネコの描かれ方、話のしまい方がよかったですね。気持ちのいいミステリ短編を読んだなって、そんな感じ。櫟究介つながりで、彼の両親が活躍するという『二つの陰画』も読んでみたくなりました。
◎天藤真の「純情な蠍」・・・・・・選ばれた短編のいくつかが、昨今はやり(?)の振り込め詐欺を彷彿させるものでしたが、これもその系列のひとつ。上質のユーモアとミステリとが、絶妙のさじ加減でブレンドされている、そんな味わいでしたね。河童とひき蛙の詐欺師コンビいうのが愉快でした。
巻末解説では、選者の恩田陸さん、「この短編を気に入ったあなたに、それでは、こっちのミステリもおすすめしたいな」と、その味わいや趣によく似た作品を水先案内していらっしゃいます。おう、ここまでしてくださるとは、至れり尽くせりのサービスであるなあ。どれどれ、仁木悦子と天藤真の作品が気に入った私におすすめの、恩田シェフ推奨ミステリっつうと・・・。