表題どおり、実用的な「技法」をちゃんと教示してくれる本である。著者は実証的な社会科学の世界における日本で最高の教師だ。私は社会学専攻の学生だが、自分の学校の教授陣からはまともな「社会調査」のテクニックを教えてもらったという経験が、これまでなかった。「対象にはっつけ」といった謎めいたアドヴァイスをくれる方や、調査する相手と自己との関係性について熱く語る先生などはいたが、もっと具体的な作業の話になると、「実践してみて、試行錯誤しなさい」みたいな方向にもっていかれて、非常に困っていた。この本に出会って、ほとんど救われた思いがした。
技法の伝授以外でも、とくに著者の失敗談がおもしろい。「失敗から学ぶ、学ばせる」という姿勢が見事に成功しているのだ。著者が学生のレポートや論文を読んでいて、「過去の自分の失敗を思い出して、赤面してしまう」というくだりも、とても好感が持てた。