パレスチナ問題は「宗教対立」ではない。
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シオニストによる植民以前のパレスチナでは、正統的・伝統的なユダヤ教徒たちがイスラム教徒たちと平和に共存していました。ムスリム(イスラム教徒)にとってユダヤ教徒は同じ神を崇める「啓典の民」なのですから、これは当然のことでした。(コーラン「イムラーン家の章」などを参照。驚くべきことに日本には、ムスリムの崇める神はユダヤ・キリスト教の神ではないと信じ込み、またそのように主張する人々がいますが、ムスリムから見ればまったくの妄説です。)
しかるにシオニズムは、伝統的ユダヤ教から切り離された「ユダヤ人」概念を捏造し、古のヘブライの民の生物学的子孫であるパレスチナ・アラブ人から暴力的に土地を奪い、人々の間に本来、まったく必要の無かった憎悪と紛争を引き起こしました。そればかりではなくシオニズムは、(解放の神学が政治的目的のために聖句を恣意的に利用するキリスト教のパロディであるのと同様に)ユダヤ教を利用しつつその教義・戒律・文化をシロアリのように掘り崩すユダヤ教のパロディであり、正統的ユダヤ教徒たち自身にとっての精神的脅威でもあるのです。
本書は、このようなシオニズムの悪行に対する正統的ユダヤ教徒たちの至当な批判を体系的に紹介する日本で初めての本であり、パレスチナ問題に関心を持たれる全ての人々に本書の読書を強くおすすめいたします。(また、伝統的ムスリムの側からの自称「ジハード」テロリズムに対する批判として、Joseph E.B.Lumbard,"Islam,Fundamentalism,and the Betrayal of Tradition”を併せてお読みになることで、伝統的宗教の破壊こそが問題を生み出していること、伝統的精神の十全な復活こそが真の問題解決をもたらすことを、十分にご理解いただけるものと思います。)