また、スー・グラフトンのミステリーの楽しみは何気ない、気の利いた表現にもある。たとえば、
”先妻の性格を語る彼の声が、しだいに耳から遠のいていった。かれの女性観は不快で、同じ話をこれまで何度もしてきたとみえ、語り口は平板で熱がこもっていなかった。”
”偏屈な芸術家にはよくあることだが、かっとなったすぐあとで、ころっと上機嫌になったりするのかもしれない。”
”・・・九フィート四方の一般オフィスで、・・・検査結果の悪い知らせを聞かされるときに使われる部屋のようだった。”
”「・・・子供部屋を二つ作るんだ」では結婚相手の候補にはならないわけか、とキッチンに入りながら思った。”
”「・・・あのひとは情緒というものが全く欠如していて、私は砂漠に一人残されたみたいな気がします」「わたしの知り合いの半分は同じように感じているみたいですが」”
きりがないのでこの辺で止めておく。