このDVDは、古武術のいわゆる教則ビデオではありません。 むしろ甲野氏による古武術研究と指導…それは自身の道場たる松声館を飛び出し、総合格闘技から果てはフルート奏者の指導まで様々な領域に渡るのですが…のリアルな状況を捉えたドキュメンタリー映画と言ったほうが相応しいと思います。 受講者たちによる生々しい体験談は、時として饒舌のきらいがたるものの、より身近な感覚として一聴の価値があるでしょう。 惜しむらくは、もう少し甲野氏ご自身による解説のシーンなどを増やして欲しかったことです。 古武術研究の第一人者・甲野氏の研究と指導とはどの様な過程で行われているかを知るに最適の一枚です。

この映画は甲野氏が日々どのような活動をしているかを写している。

自分の道場なり稽古場で他人を指導しているだけなら安泰である。だが見たところ甲野氏は呼ばれたとはいえ多くても呼んだ当人以外のその他大勢は半信半疑、あるいは見知らぬ人々の中に一人で飛び込んで、技をかけなければならない。

それぞれの団体には内部でのヒエラルヒーがあり、価値と序列がある。当然甲野氏のやり方でやっているわけではないから、いわば敵陣に乗り込んでいるに近いようにみえる。

普通こうした冒険には驚くと思うのだが、私がみせた人々は無反応だった。妙な話で恐縮だが一番いいところで見ておらず、どうでもいいところで視線を画面にうつすのである。それも複数の人間が。私的で益々恐縮だがこれはだめだと諦めた。縁の無い人間というのはいるものである。

結局体験しないからこうも馬鹿げた反応が、こうした詳しい映像でも起きるのか。

だが体験した人間でも一部だけしか見ずに我田引水的に矮小化しようとするものもたくさんいた。視点がずれてしまっているのだが気づかない。

結局人間の集団は党派的なイデオロギーに汚染されざるをえず、甲野さんの単独で立ち向かっている姿に少しは驚いたらどうかと思うのだが、結局そういう連中はインタビューに出てくる人々をも甲野派としてまとめて安心しようとするのだろう。分散した関係の結節点でしかないインタビューを、実体化するのである。

私は集団の中に入って技をかけてゆく甲野氏をみて怒りの鉄拳を思い出した。はじめからデータだけで裁断する連中はこうした言い草をも格好の餌食にするだろう。

体感的には半分以上が、甲野先生以外の人のコメント！しかもただ感想を言ってるだけだったりたいしてためになることを言ってる訳じゃない！甲野先生の言ってることを一般の人に分かる様に噛み砕いてる訳でもない！理解できなくても甲野先生から甲野先生の言葉で聞きたかった。特典映像では甲野先生が話されてる時間は長いけど上手く声が拾えてないから聞こえづらい・・・。

　かなり前になるけれど彼のビデオを購入したことがある。正直、期待していた程の内容ではなかった。私の目的が武術そのものでなかったこともあるだろうが、甲野氏も度々名前を挙げる黒田鉄山氏などのビデオを見まくっていたからだろう。

　今回、ムック本のオマケやテレビ出演の映像以外で、久しぶりに彼の映像作品を見た。講習会などのライブ現場の熱気のためかノリも良く、見ていてとても楽しめた。
　甲野氏が自分の探求心で突っ走って研究を重ね、人にどう伝え教えるかは氏の息子さんがとてもうまく行っているようだ。

　中国伝統武術でも日本古武術でも、現代では健康・美容・護身だのと無理矢理な謳い文句の宣伝をしているものだが、甲野氏は研究成果を応用して介護方面や乳児の抱きかかえ方などに活かしている。これは一般の人が、特別「修行」などせずに行える方法がほとんどのようだ。本当に実用的なものとして世の中に広く武術のノウハウが貢献すると思う。



　甲野氏自身の変化で驚いたことがある。甲野氏の【歩く姿】と【立ち姿】である。どちらもなにかの技をしている場面でなく、ただ移動しているときや立って話しているだけの場面の姿。
　私自身は観るだけの人だけれども・・・なるほどこの水準に来たのかと驚いた。あのままずっと遠回りするだけで、彼の探求の人生は終わるのではないかと感じていたけれど違ったようだ。
　もしかするとDVDで見せた甲野氏のノリの良さと明るさの原因は、自分にやっと手応えを感じたということなのだろうか。

　DVDの編集も躍動感があｒし、甲野氏の支持者のコメントの挿入タイミングなども良い感じだ。内容は良いが、観るのは苦痛だという作品もあるが、このDVDは観ること自体も楽しい。
　おすすめ。