カミュの独白
★★★★★
邦題「転落」。カミュの後期作品。
clamenceという人物の“独白”。聞き手がいることは示唆されているが、この本を通して、対話は一切ない。clamenceが、5日間に渡って、アムステルダムのあるバーで、自分の人生をで告白する。皮肉的とも自虐的とも言える口調が特徴的。邦訳にどう反映されているかはわからない。
この本は、ドストエフスキーの作品に通じる力強さがあるように思う。カミュの「異邦人」とは印象がだいぶ違う。カミュ自身、ドストエフスキーを愛読しており、この作品で、ドストエフスキーの手法を意識的に取り入れようとしたのだと思う。
読んでいて気分が明るくなるような本ではないが、clamenceを通して語られる微細な人間心理の描写には、流石カミュだなと思わされる。名作でしょう。カミュの作品を好きな人、ドストエフスキーの作品が好きな人、仏語を勉強したい人、にお勧めの作品です。