更新制 その他の改革 必要だ
★★★★☆
1.内容
自由民主党政権下の教育改革は、教員バッシングをベースとしたもので、不当である。とりわけ、教員免許更新制は、教員のやる気を失わせたり、教員を職業として選択するインセンティブ(動機付け)を弱める結果となっている。一方、民主党等連立政権の教育改革は、自由民主党のそれに比べて評価できるところはあるが、それでも問題がある。そこで、教育改革市民フォーラムは、本書を通して、更新制の即時廃止など(詳しくは本書第4章)、新自由主義的な教育改革の見直しをすべきであると主張する。
2.評価
私も、意味のない教員バッシングが教育政策を歪めていると思っていたので(日本教職員組合の組織率は減少傾向なのだから、教育が良くなっていないとおかしい)、本書の内容に共感する。ただ、教育改革市民フォーラムがどんな組織かは、教育に詳しい方ならわかっている可能性があり、そうなると調査の信用性がどうかという問題がある。この点で星1つ減らして、星4つ。しかし、今までの自由民主党的なたわ言による教育改革に惑わされずに、日本の教育をどうするかを考える上でいい1冊である。
総論賛成、論拠論旨に異議アリ
★★★★☆
この本は教員免許更新講習受講者の8割が「必要ない」としている、免許更新制度を
即時廃止せよと、訴える本である。
教員免許更新制度の即時廃止については、僕は『賛成』である。
しかし、この本の論拠や論旨については異議がある。
免許更新制について、教員不信が高まる中「政治的に利用された」とするが、
その側面は確かにある。時の安倍首相は中教審に重ねて、必要のない教育再生会議を設置した。
そのメンバーは明らかに人気取りであることを示していた。
だが、それは一側面であって、教師は確かにダメになりつつあったのである。
私は関東圏の私立中学の若い先生たちにアンケートをとったことがあるが、尊敬する先生として
予備校の先生をあげる人がなんと多いことか。
予備校の先生は勉強を教えればいいだけなのにそこに人間的な魅力を感じているのである。
体験をすこし述べる。
中一の時、担任の国語教師が「尊敬する人は誰か」とクラスに聞いた。
クラスのメンバーが冗談で「先生」と大声をあげた。先生をからかおうと
クラス中「先生」の大合唱になった。先生は少し笑いながら、クラスの騒動を制しこう言った。
「お前らな、学校の先生を尊敬するやつらなんか民度が低いんだぞ」
先生以外の人をもっと知りなさい本を読めということであった。
この教員免許更新制度で、優秀な人が教師にならなくなるというのも論拠が怪しい。
これは官僚バッシングばかりしていると官僚になる優秀な人がいなくなるという論に似ている。
そうではない。官僚になる人はなった時は「国のため国民のため」と思っている。
官僚になってからダメになるのである。教員も同じだろう。
教員はなってから「教員とは何かを知り」「学ぶ」そうだ。その点は全くその通りではないかと想像する。
教員改革は、教員免許更新制度ではなく、この辺にヒントがありそうだ。