骨まで愛している。
★★★★☆
僕の落語初体験は市立図書館だった。
まったく知識のないままテープを借りまくって、
なんて面白いんだと思ったのが志ん生と文楽。
昭和の大名人にぐいぐいと手を引かれるまま、
どんどん落語が好きになっていった。
「寄席にはなかなか行けないけれど、CDでなら毎日聴いてる」
そういう落語ファンはきっと多いはずで(僕もそうだ)、
著者である中野翠は正に「そういう落語ファン」だ。
落語は寄席に限るという定説に頷きながらも、家で楽しむ落語もまた骨まで愛している。
特に、落語に開眼してから毎日のようにテープを買い漁る姿といい、
落語を聴きながら眠る日々といい、その感覚には全く同感。
落語に対する彼女の素直な愛し方が、読んでいてとても心地いい。
ああ、帰り道の車は落語を聴こう。
著者の落語を愛する気持ちはわかりますけど。
★★★☆☆
落語初心者や、落語通だとまではいえない私のような者にとっては、落語の軽い参考書・入門書としてなら、無難な本だといえます。本質的な内容は悪くないです。しかしながら、著者の中野さんの他の著書を読んだことがないので、この一冊だけで判断するのはむずかしいと思いますが、おばさまの井戸端会議でのお話のような「〜なのよ」と、あえて記す文体は、私は嫌いですね。ひとつの落語の演目の解説を記したあと、「とにかくCDを聴いてみて」みたいな文章も、それなら、この本の存在する意味は何なの?と疑問に思えてきます。おばさんが、何かに感動したあまり、まわりの人々に何の説明もなく、それをとにかく無理矢理薦めるのと同じような感じを受けてしまいました。
著者なりのそれぞれの落語に対する思い込みをひたすら書いただけの方がすっきりしていたように思う一冊でした。私は好きな落語(演目)なら、目も頭も冴えてきてしまいますよ。落語を聴いて寝るとは、ちょっと驚きでした。睡眠学習効果なのでしょうか?
たかが落語、されど落語
★★★★☆
志ん朝ファンは談志が大嫌い!だけど、談志ファンは志ん朝は大好き!
このことに関してはちょっと矛盾を感じるけど、私は後者のほう。中野さんは無論、前者のほう(私が尊敬する小林信彦さんも残念ながら、そうなのだ)。
そんな志ん朝ファンの中野さんがほぼ入門者向けに書いたガイドがこの本!
読みながら、うんうんとうなずいたり、違うんじゃないかと反発したりしちゃうけど、この本によって、落語ファンの裾野が広がれば、いいのかなと思います。だって、落語ブームって言うけど、落語家自身が作り上げたブームじゃないから(身の回りの人が作った印象が否めない)、これから、収束していくと思うけど、ブーム後に残るファンが必ずいると思うから、もっともっと、にわかファンが増えてほしいと思います。
こだわることをあらわすのが”野暮”なのか。”野暮”ったいからこだわるのか、まぁ、どっちでもいいのだけれど、落語ってすごーくいいものだと思う。
中野さんの落語ガイド
★★★☆☆
中野さんが、彼女が感じる落語の魅力を紹介していく本。彼女の落語遍歴+好み+ガイド、といったところでしょうか。中野翠の落語ガイド、なのです。
中野さんが落語を取り上げることに違和感を感じる人もいるようだが、彼女は連載しているコラムで度々落語に言及している。それを知っている出版社サイドが、彼女なりの落語ガイドの出版を提案したのだろう。落語を総括的に扱うような本を出版したかったのなら彼女に提案はしなかったろうし、されても彼女は断っただろう。
落語の懐の深さを感じている彼女が切り取った「落語の一面」を綴った本。一面だけじゃ困る、という人は読まなければいいだけの話。
なんでこの本読んでアンツルがでてくるのかさっぱりわからない。大袈裟かも知れないけど、彼女の落語への愛を綴った本でしょう。
落語に詳しい人、「全面」を知っているという人は読む必要がないかもしれません。読んでしまったら「まずは生で聞くこと」なんて講釈しはじめるでしょう。
落語にはまりたい方必読
★★★★★
以前から落語のCDは何枚か聞いていたのですが、この本を読んだら無性に落語が聞きたくなりました。この本掲載の落語を聞いては著者の感想と自分の感想を比べたりして、楽しくなります。この本のおかげで趣味がひとつ増えました。今では志ん生さんの大ファンです。落語に興味のなかった方にこそ読んでいただきたい一冊です。著者には続編を期待します。