古典は受験の参考書選び
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ある翻訳を読みたいと思うとどうしても翻訳の出来具合いが気になる。とくに古典はどうしてもその傾向にあるように思われる。古典の内容についてはすでに了解しているから、どうしてもその形式面に関心が向くのはいたしかたない。古典の内容紹介を期待して書評を読むものはまずいないであろう。内容紹介は新刊本に限られる。
前置きはこのぐらいして、この判断力批判はいく種類もの翻訳が出ているから、その中からどれを選ぶかにかかっている。言ってみれば、受験の参考書選びと同じである。
この翻訳には訳者の注解がそれぞれの節のあとについているから、全体としてページ数が倍になっている。つまり訳、注解、訳、注解という形態をとっているのである。この形式は宇都宮訳カントに共通である。だから、ある節を読んで、どのぐらい理解しているか、確認することができる。注解を読んで、注解を理解できない場合に、どうしたらよいかは私には語ることはできない。これがこの訳の最大の特徴である。