香山リカの憂鬱。
★★★☆☆
著者の香山さんはこの本で何を言わんとしているのか、一見したところ現代日本に蔓延
しつつある徹底した現実主義や行き過ぎた自己責任論などが本当に自分たちの幸せにつ
ながるものかと、今の社会の閉塞感を鋭く指摘しているようにも見えます。
しかし、本書のまえがきにもあるように、著者の平和主義的言説は多くの批判を浴びる
事態となっており、そのような状況に対する怒りとも苛立ちとも言えるような本書の内
容は、著者自身の承認を求めているかのような切実な訴えにも見えてきます。
香山さんの理念を語って何が悪いという主張には賛同しますし、本書で取り上げるよう
な最近の世間の不寛容で世知辛い傾向にも違和感を感じますが、同時に香山さんの語り
自体にもそれらと同じような空気を感じ、結局は同じ社会の中で共通の土壌の影響を受
けているのではないかという気がしないでもありません。
本書は、著者の批判的視点により様々な箇所から現代日本の社会の一面を切り取り、偏
狭になりつつあると思われる人々の意識に対して疑問を呈する社会批判の書であると同
時に、そのような社会から批判されて落ち込む著者の、ある意味自己肯定のための書な
のではないかと思われます。
ワイドショーのコメントをそのまま本にした感じかな
★☆☆☆☆
岩波新書とは思えないぐだぐだな感じにびっくり。ベストセラーや巷のニュースに対して私はそうは思わないとあれこれおっしゃっているが、なんかワイドショーを見ている感覚。著者の本は初めて読んだが、うーん、この内容だとテレビで十分かな。
左翼的な言論での、この読みやすさは貴重
★★★★★
もともと、感情的=右翼的な読み物は共感しやすいし、読みやすい。
それに対して、左翼的な読み物は、どうしても論理的な思考が必要になるので、
「気軽に面白く読ませる」という点では分が悪い。
そんな中、左翼的な言論でのこの読みやすさは貴重だと思います。
常識は時代と伴に変化します。
★★★★☆
精神科医の香山リカさんが、時代とともに変化する日本の常識を書いた本
です。
テレビを毎日見ていると馬鹿になる。いくらはなしても理解できない「バカの壁」
があるなどと変化してきた日本では、ほとんどの人が思っている常識が、実は
たった一冊の本から産まれていることを教えてくれます。
日本の常識を変えた本のリストと思って、この本を読むと非常に興味深く読
む事ができます。
岩波新書にしては易しい内容になっています。
本の中に出てくる常識を変えた本も参考にぜひ読んでみてください。
内容が薄い
★★☆☆☆
何だか朝日新聞(左翼系新聞の意味)の投書欄を読んでいるような本であった。私にとっては、毎度毎度の香山氏の「言いたいことには同感」「個人的に憎めない意見を持った方」というので評価がついつい甘くなりがちだが、これは新聞社にとって都合の良い「投書」掲載の、やや「理論的で長いバージョン」でしかない。
香山氏特有の「私だけが言っているわけではない、参考文献にもこう書いてある」という記載も目立ったが、これも香山節で「自分に都合の良い食材を組み合わせて調理して、あたかも自分のおかずに正当性がある」とわめいているだけである。
内容が、プロが書いたものとは思えず、左翼系新聞の投書欄の域を全く出ていない。そして、私は左翼系の投書欄も苦手な人間である。正論は多いが、プロフェッショナルさに欠ける。私は割と香山氏には好意的だが、これに関してはきわめて安っぽい本だ。であるからして、私は1日で読み終えてしまったが、何度も読むのを辞めようかと思ったほどである。とても、岩波新書とは思えない。