「アートマネジメントの今」を知るには非常にすぐれた書ではある。
しかしながら、冒頭の1行に端的に示されるように理論的補強、あるいは編集の問題が多すぎる。
蛇足ながらパスカルを説明しておくと、彼は17世紀フランスの哲学者、科学者(圧力の研究で特に名を残す。)で、世間的にはモラリストの括りに入れられることの多い人物である。
このほかにも文化経済学の先駆的研究である"Performing Arts:The Economic Dilenma"の共著者であるボーモルとボーエンをボーモル=ボーエンと一人の人物であるかのように書いていたりする。
このことが著者の実績を傷つけるものでもこの本の本質的な意義を失わせるわけでもない。
しかし、このようなミスが連発されるとどうしても信頼性を欠くことになる。
著者のミスなのか、編集部のミスなのか分からないがあまりにも初歩的過ぎるミスが少なくとも評価の★を一つ奪っている。
繰り返しになるが、最新事例報告としての内容はすばらしいし、実践を目指す人間に対して著作権など法的な側面に対しての指摘もあり、全体的には好著であると思う。
このレビューは初版発行段階で書いたものです。
重版時にミスは訂正されたそうです。