フォン・ブラウンもコロリョフも1930年代のロケットブームの影響を受けた世代だった。会ったことこそなかったが、運命の糸は劇的に交錯している。ドイツ生まれのフォン・ブラウンはV2ロケットの開発に携わり、その技術をアメリカで発展させる。歴史の転換点となったドイツ脱出劇は実にスリリングだ。一方、コロリョフはドイツから持ちかえったV2を徹底して研究し、初の人工衛星打ち上げと有人宇宙飛行を成功させた。コロリョフのチームには、かつてのフォン・ブラウンの同僚も参加している。
けっきょく、偉業を達成したのはフォン・ブラウンだけだったが、政治、軍事、技術的困難に決して屈することのなかった2人をめぐるドラマは、表舞台の宇宙開発同様、ダイナミックで魅力的である。著者は宇宙の専門家だが、とても読みやすく、エンターテイメント小説顔負けのおもしろさである。(齋藤聡海)