米ソの宇宙競争は2国間のパワーゲームそのものだった
★★★★☆
ソ連とアメリカの宇宙ロケット競争が東西冷戦の中の大きな陣取り合戦の一つであったことが、明確に説明されており、俊敏なノンフィクション。当時は知ることのができなかったナチスドイツから、アメリカとソ連に渡ったロケット技術と人脈の系譜も分かるし、月に人を送ったサターンロケットの技術がV2につながるというのは興味深い。
当時の2国間のパワーゲーム、時の権力者の動き、考えに宇宙競争が深くかかわっていることも、当時の内幕を知る人物の証言などを通じて、赤裸々に描かれている。
科学の粋の塊である宇宙ロケットが、実は、人間のエゴの結晶であることを知るのは時として寒々とするが、そのエゴが目指したのはエベレストに一番乗りをするような何かを極めたい、誰も到達していないところにたどり着きたいという、純粋な達成欲というか、何かの境地たどり着きたいという欲の発露である点も明らかとなり、その点も発見となる。
アメリカ最初の人工衛星成功に尽力した人物が後年、軍籍を離れて牧師になったことを考えると、何かしたそこに共通点を見出すような気がする。そういえば、アメリカの宇宙飛行士は引退後、牧師や宗教家になる人物が多いと聞いた。ある種の境地に達した後は、神への接近しか残されていないのかもしれない