最高傑作・・・と言ったら怒られますか?
★★★★★
行間を読む。
よく小説を深く読む時のコツとして用いられる表現ですね。
漫画を読む際にも似たようなものがあると思うのです。
(この場合、漫画なのだから余白とでもいう表現のほうが正しいでしょうか・・・?)
私は鬼頭先生の多くの漫画の行間には丁寧にしたためられた狂気が渦を巻いている様に感じます。
それが他の作品よりも穏やかな日常よりの傾向が強いこの短編集の中にあることで
見事に日常の中にひっそりと渦巻く狂気を表現しています。
その日常と狂気の対比は、日差しの強い夏に顕著に表れる光と影の明暗のように、
見るものの心を派手にではないものの静かに捕らえ続けていくのではないかと思います。
優しい作品です。
★★★★★
ただ夢物語のような優しさだけではなく、
現実と言うリアルな部分も持ち合わせた上で、
暖かい読後感で胸がいっぱいになります。
「なるたる」から入りましたが、
こういった作品を描かせても素晴らしいんだと
その作家性を再確認させられました。
普通に良い話ですよ、意外にも
★★★★☆
あの鬼頭莫宏氏の短編集という事で、どんな鬱漫画が待っているのかと期待して手に取りました、が…
意外や意外。どれもこれもきちんと救いの有る良い話ばかりです。
ですがそれでも鬼頭氏らしさは健在で、「生と死」をメインテーマに扱った作品が基本ですね。ただ、「なるたる」や「ぼくらの」の様な容赦の無い描き方では無く、どこか切なくなるような展開に鬼頭莫宏氏の印象が変わってしまった方も多いのでは。
鬼頭氏のファンならずとも、一度は手に取って頂きたい一品ですね。
ですが氏特有の容赦の無い残酷な模様を期待している方は拍子抜けかもしれません。
鬼頭莫宏の優しさを感じたいなら
★★★★☆
『なるたる』や『ぼくらの』では、世界を憎み、残酷な悲しみばかりを描いてる
鬼頭莫宏が、その痛みを少しの優しさに置き換えて描いた作品を集めた短編集。
収録作『よごれたきれいな』は、この短編集を読むまでの鬼頭莫宏のイメージだと
もっと突き放したバッド・エンドになりそうに思えますが、最後のキャプションには
間違いなく優しさがあり、それのおかげで少しだけ救われたような気持ちになれます。
『AとR』や『パパの歌』なんかも普通に素敵な話だし、鬼頭莫宏ファンじゃなくても
漫画好きになら薦められる良い1冊だと思います。
買って損無し!
★★★★★
「ぼくらの」が非常に面白く
他の作品も読みたいなぁ〜と思っていた矢先に
浜松町の本屋で発見、即購入。
デビュー作からの読みきり作品が収められている。
だれそれの影響を受けていると思われる
デビュー作の絵柄が、1作ごとに
色んな描き方を試し現在の絵柄に辿り着いた変遷も楽しめる。
が、本作の醍醐味は、作品中に流れる
時間の流れに対して無力な人達の
どうにもならない、抗えないもどかしさが
読後に心に染みていることだ。
なんてことない物語のように見えて実は人の心の奥底を覗く感じ。
白っぽい絵柄が尚更なんてことないストーリーに見えさせるというフェイントにもなっている。
これは現在連載中「ぼくらの」にも共通して言えることだ。
デビュー作から一貫して、そのテイストを保っているところがスゴイ。