子どもと絵本への深い愛情と、豊富な知識、冷静な分析に感動させられる
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あの『めっきらもっきら』の作者で、児童文学界の最高峰の一人である長谷川摂子さんが、若い母親との文通という形で、赤ちゃん絵本について紹介した本。ご自身の子育てや保育士時代の感動的なエピソードをまじえ、かなり高度な絵本論まで、格調高く、優しさあふれる言葉で語ってくれます。
二段組みですが、絵本の中身を紹介したページも多数あり、どんどん読み進められます。それに単に絵本リストを羅列することなく、たとえば『おおかみと七ひきのこやぎ』など有名な本でも、その本の核心や味わい方を丁寧に教えてくれるので、絵本を選ぶ大人の目もきたえられると思います。
「子どもは絵本を聞いているとき、音楽を聴くように聞いています」とか、物語絵本には「戦い絵本」(勝利のエンディングで子どもを励ますお話)と「おふろ絵本」(世界はあなたのためにあると祝福してくれるお話)があるなど、学ぶことがどっさり書かれています。
後半では、ナンセンス絵本や激しい絵で有名な長新太やスズキコージ、また、子どもには大人気でも正調の絵本とは言いにくい「アンパンマン」や「ノンタン」の分析などもあり、とても参考になります。
でも、なにより感動的なのは、「あかちゃんの笑顔に出会う喜びだけを求めて絵本を手にとること」が肝心、と「あとがき」にあるように、どのページにも、子どもはいとしい、だからこそ良質な絵本を読み聞かせしてあげたい、という長谷川さんの、深い愛情があふれていること。生まれてきた新しい小さな命を、こんな風に大切にいつくしんでやりたい、と改めて思わされる素晴らしい絵本ガイドです。