現代アートを理解してみたいという気になった。
★★★★☆
正直、オークションで高騰したアートの価値は分からないし、「なぜこの値段なのか」に対する答えは載っていない。
でも、読んだ後なんとなく「アートを探してみようか」という意識にさせてくれる本。
需給という基本的な経済原則に基づくマーケットの構造、世界のアートフェアやオークションのしくみ、日本にアートの文化が根付かない理由などを解説していて、詳しいことを知らない私でも理解しやすかったです。
ギャラリー(画廊)は値札の付いている美術館、というのは的を得ている言葉だと感心しました。
途中2度の対談は、ギョーカイの内輪話に終始している感があって私は馴染めませんでしたが、次の章へとうまく関連付けられています。
結論としては、アートの値段は市場やあなた本人が決めること。資本主義そのものである、と。
自分が所有したいかどうか、自分にとって必要ないなら買わなければよい。
幸いにも、日本には美術館やギャラリーが多数あるので、見聞するところから始めてみよう。
ちょっとリスキーでも「好きだから」買う。
★★★★★
"「ちょっとリスキーかもしれないけど、好きだからこの作品を買おう」というように、冷静に自分の行為を分析して判断できることはとても重要なことだと思うし、すごくカッコいいことだなあ、とギャラリーにくるお客さんを見ていて思うのだ。僕はアートが好きで、自分の信じる道を進んでいる。自分で「いい」と思うことをやっていて、「うん、いい」と言ってくれるお客さんと出会えると、すごく嬉しくなる。彼らの勇気を見て、僕らも勇気を与えてもらっているのである。"
終章の著者の言葉です。響きました。アートに限らず、腕時計やヴィンテージカーなどセカンダリマーケットが整備されている「商品」を買う時は誰しも値動きを気にするし、将来的な投資価値だって頭のスミにないと言えば嘘になる。「現代アートビジネス」でも感じたのですが小山さんの考え方は、そういう副次的な要素と、自分が好きなものを愛でるという根源的な行為をうまくバランスさせる意味で非常に示唆に富むものです。感心しました。
アートだけでなく、全てのジャンルの「コレクター」諸兄は読めば必ず何か感じるものがあると思います。
時価ほど怪しいものは無い
★★★★★
値段とはそのものの作ることに費やされたコスト+需要によって決まる。それは原価0でも取り合いになればいくらでも高値が作ってことだ、それが顕著なのが芸術作品、特に販売方法がオークションとなれば更にそれは加速。下品な射精のフィギアでも高値がつく、わかりにくいよう海外で出展し身内(自分)に高値で入札させ値がついた後で国内で売るなり、もしくはその売れた名で他作品を、活動すれば盲目的に評価される怪しい世界(笑)それもまたビジネス、って話。
産業としての「美術」啓蒙書
★★★☆☆
確かに材料代をはるかに上回る作品から、時給換算してマイナス数百円となるようなものまで多種多様なのが美術の世界である。当然、一般に思われがちな、「高い」、「値上がり」、「わからない」といったイメージが付きまとう。
こういったキーワードから見たモダンアートの値段についてなどの、いわゆる啓蒙書である。
作者は、貧乏な芸術家を救うべく?この本を書いたようだが。
画廊にちょくちょく行くような人であれば、特に目新しいものはない。ただ、美術品を投機の対象として買うのであれば、初歩の初歩の入門書の位置づけ。
星4つの理由は
★★★★☆
同じ著者の『現代アートビジネス』を先に読んでいたので、かなり内容が重複す
ることは否めない。オークション会社の方、他のギャラリストの各氏との対談があることが大きな違い。トークは多分に内輪話な感じでとても楽しめた。アジアのマーケットの動向が細かく補足されているのもよかった。
著者が「アートを楽しむことができない人にはアートは持てない」というのは同
感。もっといえば、「持つべきではない」のかもしれない。
著者は、投機目的だけのアート売買にはとても警戒感をもっていて、「アート好
き」のピュアな気持が見えざる神の手となってマーケットをつくり、投資もその
なかで健全におこなわれる、という状況を理想としているように読みとれる。そ
の意味では、この本のサブタイトル「現代アートの相場がわかる」はちょっと短
絡的すぎやしないか。
星が4つなのは、総合的に『現代アートビジネス』のほうが値段が安い分、お得感があるから。