ヴィゴツキー初学者のための必読書
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ヴィゴツキーというと“発達の最近接領域”があまりにも有名で,この説を声高に提唱したソヴィエトの高名な学者というイメージが強いのですが,本書では彼が唱えた理論の大きな枠組みがわかりやすく解説されており,ヴィゴツキーを学ぼうとする初学者には必読の書だと思います.
ただ,一部ヴィゴツキーを語るうえでどうしても切り離せない詳細かつ難解な学術的記述がなされている章があるので,
この部分は他の“読み易い”書物で補足する必要があるように思います.
ヴィゴツキーを学ぶときの導入にぜひ
★★★★☆
これまで「社会文化的アプローチ」とか、ピアジェとアレコレ論争した、という感じで
キーワードだけの浅い理解に留まっていたのですが、
本書を一読してヴィゴツキーの構想に接近できた気がします。
何より印象的だったのは、発達が「教育」と密接に関連して論じられている点。
これは「発達の最近接領域」といった重要概念と絡んでくるわけですが、
人間の発達を、道具としての「ことば/言葉」という観点から見ることで、
これほどユニークな論に繋がっていくというのが驚きでした。
もちろんこれ一冊で網羅、とはいかないと思いますが、
これを足がかりに理解を深めていく分には非常に貴重な入門書なのではないでしょうか。
ヴィゴツキー理論の全体像がコンパクトに
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本書はソ連の心理学者、教育学者ヴィゴツキーについて、その理論の全体像を分かりやすく紹介した本です。
「心理学におけるモーツァルト」という形容を著者は何度も紹介します。従来、フロイトの精神分析学やパブロフなどの反射学、ドイツのゲシュタルト心理学など、様々な潮流に分裂していた心理学をそれぞれ批判し、真に唯物論的な心理学を打ちたてたのがヴィゴツキーでした。その特徴は歴史的方法の導入、言語による社会性の内面化、教育による科学的概念(高次精神機能)の形成、危機による(質的な)発達段階論、などです。
また、本書はヴィゴツキーの生涯や、彼の没後、理論の受け入れ過程についても紹介しています。37歳の若さでなくなり、学究機関は17年間。その間に、法学、哲学、芸術学の研究を修め、その上で20代後半から心理学の分野で鮮烈なデビューを果たしたことなど、とても刺激的なエピソードに興味をそそられます。また、日本では心理学よりも教育学の分野で受けれられたこと、アメリカでは共同学習の部分だけ偏って導入されたことなど、彼の理論の影響とその評価も知ることができます。
200ページほどの短い新書本ですが、ヴィゴツキー理論のダイナミックな面白さと、なにより子供に対する暖かい思いが伝わってくる良書です。教育や人間の発達に関わるすべての人に読んでもらいたい本です。
読みたくなる
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ヴィゴツキーという人のすごさがよくわかった.
この本の中にはヴィゴツキーが書いた本からの引用がたくさんあるが、どれもぜひ読んで
みたくなるようなものばかりだ.
和文訳本の不可解さの前に
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ヴィゴツキーの和訳本が多数出版されているが、難解な訳の部分もあり、概要をつかんでいないと読解に時間がかかる場合があります。この著者はその訳本にかかる方ですが、それらの内容を簡単に説明してくれています。また数ある図書よりどの本を読むことがよいかを記載していますので、入門を一読するとその先へ進みやすいでしょう。