雁屋 哲の財布
★☆☆☆☆
今巻の内容については他の方々にお任せしてこの「美味しんぼ」という作品に
ついて書かせて頂きます。
よく目にする意見で「初期の頃の方が面白かった」というものがあります。私も同意見です。
もう長いこと料理についての延々と長いだけの説明文や、各地方の紹介、料理にまるで関係の無いテーマ
などだけの面白いとは到底思えない状態が続いています。
原作者の雁屋 哲氏が20年ほど前からシドニーに移住してその後も延々と続いているこの作品。
20年前といえばまだ連載開始から数年し経っていない頃かと思われます。
邪推なのかもしれませんが、その後20年間もどうやって書かれているのかと疑問に思います。
ご本人が取材のたびに帰国されて書かれていることもあるのでしょうが、20年間という年月を
考えると、取材のたびに20年間ずっとそれを続けていたとなると現実的ではないような気がします。
作品の内容からはただ送られてきた資料を使ってその資料丸写しで、とってつけたようなストーリーを
盛り込んで書かれているのかなと思いたくなるような内容が続いています。
連載開始1話目から毎週楽しみに読んでいた頃が懐かしいです。
そろそろ雁屋 哲氏の悠々自適な海外生活のための財布をやめようと思います。
『物語』の不在
★☆☆☆☆
第一巻から読み続けています。
途中までは非常に面白く読ませてもらっていたのですが、ある時から、何が原因かは分からないけれど、驚くほどつまらないマンガになりました。
マンガとしてつまらなくなった原因は、作者が「物語を描く」ことをやめたという点に尽きるでしょう。
登場人物のちょっとしたやりとり、一見無駄なようでもスムーズなストーリー展開には必要な行間的なコマがほとんど省かれてしまっている。だから読んでいてものすごく話の進み方がぎこちないし、物語としての面白みを感じる事ができません。
地域料理の紹介には意義があるのかもしれませんが、おそらく実在の取材協力者と思われる人たちが似顔絵風でゾロゾロ登場するのは興ざめです。紹介してもらう方は嬉しいのでしょうけれど、我々読者にしてみれば赤の他人のおもしろくもない似顔絵を大量に見せられても困惑するだけ。
でも、こんなに文句言っていても、次が出たらまた買っちゃうんだろうな。おそるべし、美味しんぼ。
紀州・和歌山原点の文化が拡がる
★★★★★
このシリーズもかほど長くなると退屈になる。
しかし、読み続けているのは何故か。
食というものを色々な角度から見直してくれるからである。
最初は父子の葛藤。その後、県ごとに直接取材して各地の紹介とその風土でいかに人間が食を豊かにしていくかという流れに変えた。
原作者の好判断。もしくは編集者の好判断。
かようにして、このシリーズは、健在である。
今回の和歌山版はとくに面白かった。「和歌山人」という言葉はないであろうが、紀州という徳川家が支配した土地で、彼ら彼女らが文字通り遠隔地へひろがり、和歌山の地の食の成り立ちをひろげていたか、行動的であったかを教えてくれる。
この和歌山編に関しては 立派と評価しておく。
ちょっとネタが被ってきた気が
★★☆☆☆
日本全県味めぐり編になってから少しネタがかぶり気味な
気がします。県の特産物が知れるのは嬉しいですが、
どの県も流れが似たり寄ったりでもう少し変化がほしいところです。
たまには「口に合わぬ」とか「これは美味くない」とか言っても
いいんじゃないかと思います。そんなセリフをばしばし言っていた
初期の山岡さんに今こそ帰ってきてほしいところです。
今迄の各県味巡りより 一段深い作品になったと思う。
★★★★★
今回の和歌山県味巡りは 青森県味巡り以上に良かった。
料理を通して日本文化の深みや歴史を知るという
本書ならではの姿勢が十分発揮されている。
徳川御三家という和歌山県の歴史から始まり、
年貢80%超の重税と茶粥、
味噌、醤油、鰹節、梅等保存食の開発と、
鰯を追いかけて銚子まで行くことにより得られた航海技術と漁業技術、
それらがマッチして日本中へ広まっていったこと、
その航海技術によりミカンを始め日本中で交易が盛んになっていったこと、
作者は それら各県を有機的に結び付ける経済活動の原点を和歌山県で見付け、
今不況に喘ぐ我々へのメッセージ、エールにまで昇華している。
当時の和歌山県人の苦労とそれを乗り越えた進取で外向きな気風は、
現代の不況を乗り越える上でも大変参考になる、
会社経営者にも是非読んで貰いたい。