第2次世界大戦に続く歴史観を養う
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第一次世界大戦について、豊富な写真や資料と共に、兵器、動員力、民族、王室、政治、戦術といった、多角的な視点から解説を行っている。この下巻は、主に大戦の後半部分について書かれている。戦後処理や各国のその後についても触れられている。
第二次世界大戦の本に比べ、第一世界大戦の本は格段に少ない。しかし、第二次世界大戦に関心を持っている方には、以下の理由から、ぜひ本書も一読されるように勧めたい。
まず、第二次世界大戦とつながった大きな歴史観を得るのに役に立つ。次に、当時の日本がここからもっと学んでおけば、ということがたくさん出てくる。各国陸軍を支配していた精神主義が進歩した大砲と機関銃の前に崩れ去り、護送船団方式をとらない輸送船は次々潜水艦の餌食になり、資源確保が重要になり、特に策も無いのに短期終結を狙って始めた戦争が総力戦に発展し、新兵器が次々登場し、情報が重要になり、突撃頼みの戦術がだんだん洗練されたものに置き換わってゆく。
本書は、ひとつひとつの戦いについてはそれほど詳しいわけではない。しかし、上下巻共に視覚的な情報を交えながらうまく整理されている上に、必ずしも兵器などの軍事マニア向けの情報だけに偏った説明にはなっておらず、大局的な視点からこの悲劇の総力戦の概要を把握できるように編集されている。
20世紀の前半の歴史は2つの大戦が大きな軸になっている。よって、この2つの大戦を理解することは、20世紀の歴史だけでなく現代の世界を理解する上でも役に立つ。本書はそのための助けになるだろう。
現代の戦争を語るには避けて通れない筈ですよね。
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学研さんの歴史群像ムックは既にかなりの数を購入したのですが発売日を変更することが少なくて好感を持っています。 自分の経験上ですが第二次世界大戦のことを細かく取り上げている本はいくらでも見つかっても第一次世界大戦のこととなると良質な書籍を探すのは至難。わかりやすいものとなると皆無です。 この原因はこの戦争に我が国が深く関わらなかったためでしょう。しかし、それだけでなく戦争そのものに対して深く、そして感情的になる事なく考えることが出来る人が日本国には少なかったと言う事かもしれません。
ところでこの本は上下あわせて一月ほどかけて読んだのですがとくに興味深かった項目は上巻の「開戦の背景を探る」と「王朝ネットワークの崩壊と云々」、下巻の「総括/第一次世界大戦」です。これにより老齢期を迎えたそれまでの欧州の繁栄がとどめを刺された様子を(なんとなくですが)イメージ出来るようになります。兵器や戦術のことなら第一次大戦のことでも一生懸命追いかける人達は結構いるんですけどねぇ… まぁ、もっと突っ込んでいこうとしたら膨大な巻数になってしまうので自分程度の素人ならこれくらいで充分でしょう。
しかしやや残念なことは海戦については殆ど書かれていないところです。この戦争では海の戦いは戦略的な影響が少なかったのでしかたがありません。これについては三野正洋氏の「死闘の海」と言う本が詳しいので補えますが。
とにかくミリタリー&戦記好きな若い人はじっくり読まれると良いでしょう。とくにガンダム等からこの方面に取っ掛かりを掴んだ方は(自分もそうです。)過去から未来の戦争について考察する時に良い指標になるやもしれません。