しかし、それぞれのスピーチを分類し、読者が人生で使えるようにモード変換しているところに無理があり、オリジナルのスピーチそのものの巧みさ、深さ、偉大さを冒涜しているような気もする。
一例として、ビル・クリントンのスピーチそのものは、本当に良くできている。しかし、これは、単純に『謝罪する』に分類されるだろうか。実際は、『事態を終息させる』であり、本文中の解説にあるように、弁明・言い訳の部分に工夫が凝らされている。日常生活における謝罪の場面であれば、もっと他に、適切な謝罪の表現があると思う。
チャップリンの独裁者の演説は『説得する』というカテゴリーで良いのだろうか。映画の役の上では『正義を貫く』、人間チャップリンとすれば『権力(ナチス)に怯まず映画で戦う』であったと思う。
必ずしも紹介されている名スピーチを人生で応用できるとは思えないが、名スピーチの世界に浸り、その創作者や発話者の頭脳と意志から学びたい人には、お勧めです。